奈良の秘宝・室生寺の旅レポート②

Muro-ji / 室生寺

みなさま、こんにちは。奈良生まれ・奈良育ちのMiyakoです。今回は、奈良県宇陀市にある「室生寺(むろうじ)」の見どころを紹介していきます。

室生寺は、大自然の広がる美しい風景と、超一級品の国宝・重要文化財を拝むことのできる、奈良の名刹です。奥深い山中に、凛とたたずむ祈りの世界を、あなたも訪ねてみませんか?

室生寺のアクセス方法と参道に並ぶお店については「山奥に秘められた室生寺の旅レポート①」をご覧ください。室生の美味しい食べ物や温かい人々の様子を紹介しています。

室生寺は自然と調和する美しい山岳寺院

Muro-ji / 室生寺

室生寺は、奈良県宇陀市にある真言宗の山岳寺院です。奈良時代末期、興福寺の僧・賢璟(けんきょう)によって創建されました。

真言宗の総本山である高野山金剛峰寺が、厳しい女人禁制であった頃から、室生寺は女性の参拝を許してきました。そのため、室生寺は「女人高野」とも呼ばれており、長きにわたって女性からも親しまれているお寺です。

まずは、室生寺の門前にある「太鼓橋」から、境内にある「五重塔」までの道のりを、写真と一緒に紹介していきますね。

 

太鼓橋

こちらの朱塗りの「太鼓橋」が、室生寺への入口です。「太鼓橋」は、バス停「室生寺」から徒歩約5分の位置にあり、清流・室生川に架けられています。

バス停から室生寺に向かう際は、老舗料理旅館「橋本屋 」の看板を目指して歩くと、道に迷うことなく辿り着けますよ。

 

表門 / Omotemon Gate

「太鼓橋」の中腹に差し掛かると、室生寺の「表門」が見えてきます。私が訪れた初夏は、みずみずしい緑と朱色の美しいコントラストを拝むことができました。この場所は、桜や紅葉など、四季折々の麗らかな風景で、旅人を迎え入れてくれるスポットです。

 

参道

室生寺の「表門」は、基本的に閉鎖されていますので、右手に続く参道を直進して、参拝受付に向かいましょう。その途中には「三宝杉」と呼ばれる、3本の太く立派な大杉を拝むこともできます。大人の両手でも抱え切れないほどの幹を見ると、この地に根付く自然の力強さを感じます。

 

参拝受付

しばらく直進すると、参拝受付が見えてきます。拝観料は、大人600円・子供400円です。団体料金などの詳細は「総合案内|女人高野 室生寺 」をご覧ください。拝観券と一緒に、室生寺の歴史や建造物を案内するパンフレットもいただけます。

 

杖 / Canes

受付の側には「杖」が置いてあります。室生寺は、室生山のふもとから中腹に広がる山岳寺院ですので、1番上の「奥の院」まで登る場合は、合計700段もの石段を登ることになります。足腰の負担を減らしたい方は、こちらの杖をお供に参りましょう!

また、帰りのバスの時刻表も、あらかじめ確認しておくことを忘れずに。最新の時刻表は「奈良バスなび|奈良交通 」にてご確認ください。

 

納経所

参拝受付の向かいには「納経所」があります。お守り・お香・キーホルダー・クリアファイルなど、お土産にぴったりの商品も並んでいますよ。

また「納経所」の左隣には、お手洗いがありますので、こちらで先に用を済ませておきましょう。これから山中に入っていきますので、先に進んでしまうとお手洗いはありません。

 

仁王門

「納経所」の先にそびえ立つのは「仁王門」です。門の左右には迫力ある仁王像が安置されており、その美しい色彩と力強い造形は見応え満載です。

 

仁王門

ところで「仁王門」ですが、2019年10月11日まで屋根の改修工事が行われている予定です。改修が終了するのは、室生寺の紅葉シーズンが近づく頃。特に11月中旬頃になると、鮮やかに色付いた紅葉と「仁王門」の美しいコラボレーションが見頃を迎えます。今からその景色が待ち遠しいですね。

 

鎧坂

「仁王門」をくぐり抜けた先には、大自然が生み出す圧巻の光景が広がっています。室生寺は、大きな山の中にひっそりと隠される秘宝のようなお寺なのです。

視界の中央に待ち構えるのは、自然石を積み上げられた石段「鎧坂(よろいざか)」です。下から見上げると、鎧のさね(細長い小板が編み上げられている部分)に見えるため、「鎧坂」と名付けられました。そして、石段の両側には「石楠花(しゃくなげ)」が植えられており、花の見ごろを迎える4月下旬~5月上旬には、日本各地から多くの参拝者が集まります。

 

鎧坂

さて、いよいよ片道700段の旅路の始まりです。石段の先に見える「金堂」を目指して、一段一段、ゆっくりと登っていきましょう。

自然石の階段のため、あまり足元は整っていません。室生寺には履き慣れたスニーカーで行くことを強くおすすめします。

 

金堂

急な石段「鎧坂」を登り切ると、正面にあるのは「金堂」です。平安時代初期に建築、江戸時代に増築されており、現在は国宝に指定されています。

金堂

「金堂」の内陣には、向かって左から、十一面観音菩薩立像(国宝)文殊菩薩立像(重文)釈迦如来立像(御本尊・国宝)薬師如来立像(重文)地蔵菩薩立像(重文)が並んでいます。

また、十二神将(重文)も並べられており、それぞれの頭上には十二支の動物が割り振られています。躍動感のある立ち姿とユニークな表情を、ぜひ一像ずつ見比べてみてください。穏やかな表情の仏様とは、また違う魅力に溢れていますよ。

※室生寺の仏様は、全て写真撮影禁止のため、内部の様子をお見せすることはできません。独特の空気が充満しており、背筋がすっと伸びるような雰囲気は、ぜひ現地で体感してください!

 

弥勒堂

「金堂」の左手には「弥勒堂(みろくどう)」があります。

「弥勒堂」は、鎌倉時代に建立されて、現在は重要文化財に指定されているお堂です。内部の須弥壇(しゅみだん)には、御本尊の弥勒菩薩像(重文)が安置されており、脇檀には、釈迦如来坐像(国宝)が安置されています。

これらは平安時代前期に作られた木彫りの仏像で、室生寺の中でも特に歴史の古い仏様となっています。その歴史の長さが圧し掛かってくるような、重厚な雰囲気が伝わってきますよ。

 

石段

「弥勒堂」を出たら、さらに山の上へと登っていきます。室生寺は、至るところに石段がありますので、体力と相談しながらゆっくり進んでいきましょう。

 

灌頂堂

石段を登った先には、室生寺の本堂である「灌頂堂(かんじょうどう)」が待ち構えています。鎌倉時代に建立され、現在は国宝に指定されているお堂です。

「灌頂堂」では、真言宗において最も大切な儀式である「灌頂(かんじょう)」を行います。「灌頂」にもいくつかの種類がありますが、中でも代表的な「結縁灌頂」は、仏様とのご縁を結ぶための儀式です。目隠しの状態で、曼荼羅に樒(しきみ)を落とし、樒の落ちた場所に描かれている仏様と、ご縁が結ばれるとされています。

 

灌頂堂

「灌頂堂」には、如意輪観音菩薩(重文)が安置されています。こちらは、大阪府「観心寺」・兵庫県「神呪寺(かんのうじ)」の如意輪観音像と合わせて、「日本三大如意輪観音」と称されている仏様です。

「灌頂堂」では、一般の私たちも外陣に座り、御本尊を拝むことができます。わずかな明かりに照らされる中、仏様と向き合うと、まるで心を見透かされているようです。凛とした気配を感じながら、穏やかに心を整えることができます。

 

五重塔 / Five-story Pagoda

「灌頂堂」の先にある石段を見上げると「五重塔」が見えてきます。こちらは平安時代初期に建立されており、現在は国宝に指定されています。その高さは、約16.1メートルで、日本の屋外に建つ五重塔の中では最も小さいものです。

 

五重塔 / Five-story Pagoda

実は、1998年、室生寺の「五重塔」は、台風による大きな被害を受けました。強風によって、境内の巨木が倒れ込んでしまい「五重塔」の屋根は5層とも損壊してしまったのです。しかし、そこから約2年半をかけて、国の支援・全国からの寄付・各専門家の知識・技術を掛け合わせ、見事に修復されました。

 

五重塔と石楠花 / Five-story Pagoda with rhododendrons
写真提供:宇陀市役所/Photo courtesy of Uda City Hall

「五重塔」は、室生寺のシンボルとして、今日も訪れる全ての人々を惹き付けています。平安時代の建立から現在に至るまでのドラマ・時の長さに想いを馳せて、お気に入りの場所からじっくり眺めてみてくださいね。

また、石段の両側にある淡いピンクの「石楠花(しゃくなげ)」と、朱塗りの「五重塔」が生み出す光景は、息を呑むような美しさ。写真撮影にもおすすめのスポットです。石楠花の花は4月下旬~5月上旬にかけて見ごろを迎えます。


石段の先にたたずむ奥の院を目指す

奥の院へ

ここからは、室生寺のさらに奥深いスポット「奥の院」までの道のりを紹介していきます。「五重塔」の先にある石段を登り切ると、右手に新しい道が見えてきます。そこから先、ずっとずっと奥に待ち構えているものが「奥の院」です。

 

奥の院へ

大自然に癒されながら、杉木立に囲まれた山道を進んでいきます。まるでトレッキングをしているような気分です。

 

無明橋

朱塗りの橋は「無明橋」です。そしてこの辺りは「室生山暖地性シダ群落」として、国の天然記念物に指定されています。四国や九州に生息するイヨクジャクやイワヤシダが見れますので、ぜひ探してみてくださいね。「無明橋」の右側辺りに生息しており、ここが分布の北限であると言われています。

 

石段

「無明橋」を通り過ぎると、室生寺の真骨頂とも言える約370段の石段が待ち構えています。斜面が急で、ゴールの見えない石段の連続です。石段の幅も狭いので、転ばないように気をつけながら、自分のペースで黙々と登っていきます。

 

石段と懸造の建物

懸造(かけづくり)の建物が見えてきたら「奥の院」まであと少しです。木立の中にいるので涼しさを感じていたはずが、私はここに来る頃にはすっかり汗ばんでいました。思っていた以上の坂道が続くので、参拝者のみなさんも、息を切らしながら登っています。

 

奥の院

累計700段の石段を登り切ると、ようやく「奥の院」に到着です。私の場合「五重塔」から「奥の院」まで、15分ほど掛かりました。途中の急勾配には心を折られそうになりましたが、いざ到着すると、達成感と清々しい気持ちでいっぱいになります。足腰と体力に強い不安がなければ、ぜひ1度は登ってみてください。

写真左は「常燈堂(じょうとうどう)」または「位牌堂(いはいどう)」と呼ばれるお堂です。周りにはベンチも置かれていますので、一息ついて、これまでの疲れを癒すことができますよ。

 

御影堂

「常燈堂」の向かい側には、弘法大師をまつる「御影堂(みえいどう)」があります。鎌倉時代に建立され、現在は重要文化財に指定されているお堂です。内陣には、弘法大師四十二歳像が安置されており、基本的には毎月21日に開帳されます。

 

奥の院・納経所

こちらは「納経所」です。「奥の院」限定の御朱印をいただくこともできますよ。

 

常套堂からのながめ

石段を下ってしまう前に、「常燈堂」の舞台から、これまでに歩んできた道のりを見下ろしてみてください。「奥の院」まで辿り着いた方だけが見ることのできる、素晴らしい景色が広がっています。私も、大自然と共存する室生寺の素晴らしさを改めて感じることができました。そして、心地よい疲労感を抱きながら、時を越えて愛される室生寺の魅力に浸りながら、ゆっくりと石段を下っていきましょう。

 

地蔵

奈良県宇陀市には、今も数多くの歴史的建造物が残っています。どの寺社もそれぞれの歴史・先人の想いを守り継いでいますが、ここ室生寺もその例外ではありません。室生寺にしかない魅力があり、室生寺だからこそ見れる景色が残っています。太古の自然と調和する祈りの地に、あなたもぜひ足を運んでみてください。

室生寺
所在地:〒633-0421 奈良県宇陀市室生78
拝観時間:4月1日~11月30日 8時30分~17時・12月1日~3月31日 9時~16時
拝観料:大人600円・子供400円
リンク:
山奥に秘められた室生寺の旅レポート①
「女人高野 室生寺」公式サイト

このページの情報は2019年8月のものです。