【東奈良名張やまなみライド】香落渓・紅葉&新緑ルート

関西の穴場、曽爾村

奈良市や大阪方面からの週末旅行者に人気の観光地、曽爾村。日本のみなさん、そろそろこの知る人ぞ知る関西の名所は、もっと全国的に、いや、世界的に認知されてもいいのではないでしょうか。

「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら

Lake Shorenji
青蓮寺湖(しょうれんじこ)
行 程 名張駅 = そにのわの台所katte(レンタサイクル) = 民宿2・7 = 大和当帰ハーブガーデン = ねんりん舎 = 香落渓 = 青蓮寺湖 = 名張駅   ルートマップ
走行距離 23.4 km
獲得標高 158 m
実施日 11月23日

私は新型コロナウィルス感染症が流行りだしてから、自転車で田舎をひとりで探訪するようになりました。そんな中、東奈良名張ツーリズムが最近つくった数あるサイクリングコースの内の一つに、曽爾村のコースもあることを知りました。写真を撮影しながら全コースを試乗しましたが、特に運動が得意でなくても大丈夫です。私はのんびりと週末にサイクリングを楽しむタイプの人ですが、満喫することができました。

8月に入り、紅葉のピークが予想される11月中旬の連休に、サンビレッジ曽爾のオートキャンプ場のバンガローを予約しました。車がないとアクセスできないキャンプ場や自炊式のコテージやバンガロー以外にも、今回の旅では様々な場所に宿泊することができます。3泊目は、名張駅から徒歩すぐのビジネスホテル、スマイルホテル名張 に宿泊しました。サイクリングの後温泉で疲れを癒せて、食事付きの宿泊先がいい方は、周辺の旅館やホテルを予約してみてはいかがでしょうか。

Soni Highland in autumn
こちらの観光名所「曽爾高原」は今回のサイクリングルートに含まれていませんが、この美しい景色を見るために曽爾村で宿泊するのもいいですね

曽爾村の主要最寄り駅は近鉄・名張駅です。京都駅、大阪難波駅、近鉄奈良駅、伊勢市駅または宇治山田駅、名古屋駅からは、近鉄特急 が便利です。あらかじめ曽爾村での宿泊先に、名張駅までの送迎をお願いすることもできます。名張駅から曽爾村までの約20kmをカバーする他の方法としては、以下のようなものもあります。

  • 名張駅東口でレンタカーを借りる
  • タクシーを使う
  • レンタサイクルを使う(ただし上り坂)
  • 名張駅から曽爾村内まで50分間バスに乗る(不定期運行)

名張駅西口を出てすぐのところに、バス乗り場となばり観光案内所 があります(毎日9時から16時まで営業)。駅前にはローソンもあります。もしバスや自転車で曽爾村まで移動をされる場合、なばり観光案内所で手荷物を預かってくれます(ただし16時までに戻ってきてください!)。もしくは、名張駅のコインロッカーに荷物を預けることも可能です。

Nabari Tourist Information

地域密着型のシェアキッチン

サイクリングロードのスタート地点は、曽爾村役場の向かい側にある「そにのわの台所katte」です。バス停のすぐ近くにあり、村の中心部に立地しています。

Soninowa Kitchen Katte

「そにのわの台所katte」は、本格的な設備を備えたシェアキッチンで、地元の物産品が購入できるショップも併設されています。

Local vegetables

ショップエリアでは、漆塗りのお箸、榧(かや)の実ナッツと榧オイル等のヘルシーな食品、特産品の規格外トマトを使用したオリジナルのトマトソースが並んでいました。そしてこの地域の特産である柚子製品も。「そにのわの台所katte」は、地域に寄り添ったサスステナブルさを兼ね備えていて、オーガニックでヘルシー、シンプルながら素晴らしい取り組みをしています。「やまなみライド」サイクリングのスタート地点に打ってつけですよね。
(さらに詳しく:オンラインショップ「ソニノワマルシェ」

Local products

At Soninowa Kitchen Katte

「そにのわの台所katte」は、地元の人たちとの会話のきっかけになりそうな場所です。ここで、タイから曽爾村に移住してきた女性と出会いました。彼女はこのシェアキッチンの活用方法を開発するお手伝いをしているそうです。室内の壁には、彼女が考えたタイ料理と曽爾村の食材を融合したスイーツの写真が貼りだされていて、曽爾村がいかにインクルーシブ(包括的・住民すべてが社会の構成員として生活し支え合う)か、実感したひとときでした。

関連記事: 曽爾村の旬食材×本格タイ料理のワークショップ

木を基調とした「そにのわの台所katte」の快適なトイレを利用した後、手袋とネックウォーマーをはめ、背伸びをしてからサイクリング用の大きい自転車にまたがりました。ここからは旅の相棒である藤尾さんの後を追いかけていくことにします。次回は電動アシスト付き自転車にしょうかな。整備がきちんとされているハイスペックな電動付きアシスト自転車を2,000円/日(9:30~16:30)で借りられるんですよ。(レンタサイクル受付はそにのわGLOCAL まで)

Electric bicycle

道を進んでいくと2・7(ツーセブン)という商店を併設する民宿にたどり着きました。目の前には切り立った山肌が特徴的な鎧岳がそびえています。鎧岳をしばらく眺めつつ、写真撮影をすることとしましょう。

Yoroi Dake
鎧岳

日本古来の薬草、大和当帰

つづいて500mほど進み、青蓮寺川と兜岳を眺望できるハーブガーデンに立ち寄りました。ここで、群馬から移住してきたという小倉さんと合流。彼女は、地域の人々が大切に手入れをしているハーブガーデンについて、英語で熱心に説明してくれました。生育時期に行われるのキャンプ、バーベキュー、収穫体験などでは、いずれも後でハーブティーが振る舞われることになっているそうですよ。

Herb gardens

こちらの畑では、漢方薬の原料として使われている大和当帰 を主に栽培しています。大和当帰の根の部分は、生薬として古来から婦人科系の漢方薬に利用されています。

「そにのわの台所katte」に戻り、ドライ加工をした大和当帰を試食したところ、セロリの葉のような味がしました(実際にセロリ科です)。

Local products
大和当帰と柚子

漆について学ぶ

Soni Village

坂道をこぎ始め、このまま曽爾高原へ向かうのではないかと心配になりました。冷たくなった鼻を拭きながら、ペダルを必死にこいで息を荒げている自分がいました。そんな不安もつかの間、すぐに次の目的地が1km先にある場所「ねんりん舎 」であると知り、ほっとしました。こちらの建物は、村を上げて漆文化復興に取り組む施設で、漆器づくりの工房としても使用されています。お正月など特別な行事の際、日本の家庭では漆器が使われるのは私も知っています。

Nenrin

2005年、漆文化の衰退を懸念した曽爾村の有志が立ち上がったのをきっかけに、漆の植樹がされるようになったそうです。私は葉を落とした状態でたたずんでいる漆の木(11月)が、まるで傘が裏返ったフレームのように並んでいるのを不思議に思いながら眺めていました。

Urushi trees

このような地域の方々のおかげで、ねんりん舎は、現在ワークショップやイベントの拠点となっていて、下記のようなプログラムが行われています。

  1. 金継ぎ:割れた陶器を漆で補修し、さらに金で継ぐ技法。毎回、漆が完全に乾いた後から上にまた漆を重ねる工程を10回以上繰り返すため、制作期間は数カ月に及びます。
  2. 漆チップを使用したハンカチなどのウルシ草木染め体験
  3. 漆器「葉の器~Leaf TRAY~」の販売。和紙を柿の葉に貼り、漆を重ね塗りすることで強度をあげて作られています(そにのわの台所katteでも販売中)。
urushi leaf plate
柿の葉を漆塗りした「葉の器~Leaf TRAY~」

漆塗りの行程はものすごく長い時間がかかります。まず、太った男の人くらいの太さの漆の木を登り、樹皮に横線の傷を入れて樹液をかき出していきます。すると、樹液が滲み出てくるので、それをヘラですくい取ります。このたいへんな作業、鋭い爪を持った熊を訓練して、手伝ってもらうとかできればいいのにね(笑)。

そしてちょっと回り道をして、漆採取を終えた傷だらけの木を見に丘の上まで登りました。

Urushi trees
採取した痕跡が残る漆の木

香落渓の絶景

その後、青蓮寺川沿いを北へ下り、全長8kmある「香落渓(かおちだに)」という名の美しい渓谷を走り抜けます。

Kaochidani

中でも紅葉谷は、香落渓の景勝地の一つになっています。秋になると、色とりどりの紅葉が見頃を迎えて景色を彩ります。

Momiji-dani
紅葉谷

もう1つの見所は、渓谷の奥にある屏風岩です。おおよそ2kmにわたって柱状節理の断崖絶壁が続きます。以前、家族でここをドライブしていた時、屏風岩の上の方でスポーツクライミングしている人を見かけました!

Column rockwall
柱状節理の断崖

細くて高いところにある道路からは、眼下に広がる湖を一望することができます。私たちは水辺まで下りていってからまた上に戻り、ダムを渡りました。週末にも関わらず、交通量は少なかったです。

Lake Shorenji
香落渓と青蓮寺湖
Crossing Lake Shorenji
青蓮寺ダムの湖

サイクリング後のご褒美

松の葉が舞い散り、沈んでいく太陽が長い影を落とす夕暮れ時に積田神社を通りました。燃えるようなもみじの回廊、黄金のいちょうの絨毯が、まるで厳かな鳥居の額縁に収められたよう。

そこから数分走り、名張駅前のローソンの横にある「賛急屋(さんきゅうや) 」の店先に自転車を停め、店内で温かい飲み物とレモンケーキで暖をとり、その日のサイクリングを終えたのでした。

Sankyuya
賛急屋の店内
Lemon cake and coffee at Sankyuya
レモンケーキとコーヒー

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