東奈良名張ならではのこだわりの伝統工芸品
私の主な任務は、国際交流員として日本と私の母国との関係を深め、促進することです。そのためには、まず日本について深く理解することが大切です。ニュージーランドが羊やラグビーだけで語れないように(もちろん、それらも素晴らしいのですが)、日本にも多くの魅力的な文化があります。幸運なことに、私はまだあまり知られていない日本の芸術やライフスタイル、文化を体験し、それらを紹介する機会に恵まれています。
そして今回、中学校のALTであるギャビン先生と一緒に、「奈良印傳(ならいんでん)」という素晴らしい工房を訪ねることとなりました。
「奈良印傳」を訪れる前は、“印伝”が何なのかさえ知りませんでした。ましてや、その歴史がこれほど長く、豊かなものであることなど知るよしもありませんでした。 印伝の製造工程では漆が使われているから気をつけて、と言われました。それを聞いて私はすぐに、日本の漆塗りの箱や、精巧に装飾されたお椀や物入れを頭に思い浮かべました。「奈良印傳」ではそういった小物を作っていますが、革工芸が専門です。昔からこの革工芸は、実用的な救命の消防服からファッショナブルなサムライの鎧の装飾品まで、あらゆるものに使用されてきました。現在では、職人によりバッグ、財布、シガレットケースなど、さまざまな革製品が作られています。
いざ奈良印傳の工房へ!
三重県の名張市役所から奈良県は宇陀市へ、緑豊かな森となだらかな川が絶え間なく流れる曲がりくねった山道を40分ほど走ると、「奈良印傳」の工房に到着。工房は一角にひっそりとたたずむ落ち着いた雰囲気で、その外観からは、ここが他に類を見ない製品を扱う全国的に有名な店で、オーナーが「現代の名工」に認定され、黄綬褒章も受章した工房だとは想像もつきませんでした。しかし店内に入ると、印伝関連の歴史的なコレクションに目を奪われました。
店内にはレプリカの刀や薙刀(なぎなた)、火縄銃がありました。刀と薙刀が印伝に関係していることは理解できますよね。刀の吊革や薙刀の鞘に印伝が使われていたからです。でも鉄砲がなぜ関係してくるのでしょうか? 今から考えれば、その理由は明白なのですが、まず考えてみてください。答えはこの記事の終わりに記載します(それまでに答えが分かった場合はボーナスポイント!)。
もうひとつ印象に残ったのは、商品の柄や色のバリエーションが豊富なこと。それぞれの伝統柄には、代々受け継がれてきた意味や用途があります。
周りのさまざまなものからインスピレーションを得、誰もが鑑賞し理解できる意味を吹き込み、美しい芸術作品が創り出されました。私はマオリ(ニュージーランドの先住民族)の伝統的なコワイワイ模様 の彫刻を思い出しました。彼らもまた、自然界からインスピレーションを得て、特定の模様に意味を持たせていました。
例えば、印伝の柄の中で私が特に惹かれたのは、トンボの柄です。トンボは別名“勝ち虫”とも呼ばれ、勝利をもたらすと信じられていたため、武士や戦士の間で好まれていました。トンボは俊敏で狩りの名手であり、前方にしか飛べないことから、勝利に向かってひたすら前進し、決して後退しないことの象徴となりました。個人的には、未来に立ち向かいそれに向かって揺るぎなく突き進むという決意を、昔の人のような生死を分けるような重大な局面においてではなく、日々の生活の中で持ち続けたいものです。
自分たちの製品を作る前に、オーナーであり職人でもある南浦太市郎さんに話を聞くことができました。南浦さんが印伝について非常に情熱的で知識が豊富であることは、すぐにわかりました。南浦さんは奈良における印伝の歴史と、比較的最近まで印伝がほとんど廃れていたことを教えてくださいました。合成素材と近代的な製造方法の台頭により、印伝そのものが過去のものとなり始めた時期があったそうです。幸い40年ほど前、南浦さんは伝統的な印伝の技法に興味を持ち、以来独学で写本や古書で研究し、なんとか復元にこぎつけたそうです。しかし、南浦さんはそれらの書物にある伝統的なデザインやアイデアにこだわるだけではありません。
工房にはモダンな印伝のデザインもたくさんあります。実際、南浦さんに好きな柄は何か尋ねると、「すでに何百もの柄があるし、新しい柄もどんどん作っているから、ひとつには決められない」とのこと。お客さん、特に外国人のお客さんへのメッセージは「ぜひ『奈良印傳』を体験しにきてください。『奈良印傳』の良さや特徴を一人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。」とのことでした。この言葉には、単に商売繁盛のために言っているのではなく、本当に自分の情熱を世界と分かち合いたいという気持ちが伝わってきて、とても嬉しくなりました。
オリジナル小銭入れ作りを体験
印伝の歴史を学んだ後、印伝の小銭入れを作らせてもらうため、私たちは店の裏にある工房に案内されました。まず、革5、6種類の中からひとつ選びます。柄を付ける工程は難しいので革にはすでに柄が施してありました。
ギャビンはトンボ、私は千鳥を選びました。千鳥を選んだのは、千鳥には私の生活全般、 特に国際交流員として役に立つ意味があると思ったからです。千鳥は、千羽の鳥がさえずりながら森に来るように、お客様を歓迎する意味もあるそうです。
小銭入れの柄を選んだら、あとはそれぞれのパーツを組み立てるだけ。柄の入った革を小銭入れの形に合わせてトリミングし、ファスナーを側面に接着しました。これが予想以上に難しかったのです。もともと図工は得意ではなかったのですが、少なくともまっすぐに接着するくらいはできると思っていました。結果、ある程度まっすぐに貼り付けることはできましたが、接着剤の量を微妙に調節することは、私の能力では少し難しすぎました。現時点では、ファスナーに沿って接着剤がたくさんついているためジッパーの開閉が難しいけれど、そのうち余分な接着剤は乾いて剥がれていくと聞いてほっとしました。というわけで、最終的な仕上がりには満足しました。
「奈良印傳」は皮革愛好家にとって夢のような場所です。豊かな歴史から精巧で現代的な品々まで、どなたにもお楽しみいただける逸品がありますので、ぜひお立ち寄りいただき、「奈良印傳」の素晴らしさを体験してください!!
Answer: 弾薬と火薬を運ぶためです!
- 奈良印傳
- 奈良県宇陀市菟田野古市場432
- 公式ウェブサイト&オンラインショップ
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