宇陀・青葉寺で滝行体験

奈良県宇陀市に引っ越して半年。夏の忙しい日々も終わり、これから1年の中で最も忙しい秋の観光シーズンが到来だ。

山々に囲まれたこの地域は美しい秋の紅葉でも知られるが、滝をはじめとする水の秘境がいくつかある。夏になるとよく滝に遊びに行く私。季節は秋だが、今回はそのうちのひとつをご紹介したいと思う。

訪問したのは青葉の滝。昨今は写真撮影をする人も多く訪れるそうで、ネットに上がっている写真を見ると段状の岩を流れ落ちる水が非常に神秘的だ。青葉の滝は青葉寺(せいようじ)という日蓮宗の寺の裏山にあり、ここでは勤行、祈願、そして住職の指導のもと滝に打たれる、という本格的な滝行が体験できる。

青葉寺で勤行

青葉寺 / Seiyo-ji

青葉寺に着くと背の高い身体のがっちりした山口住職が、出迎えてくれた。

一通り説明を聞き本堂で自分の名前を書いたお札を前に祈願をして頂いた。堂内には木魚の音が鳴り響き住職と一緒に手を合わせ目をつぶる。心願成就・身体健全を祈願して頂く。

滝行前の祈願

青葉の滝で滝行

祈願も終わり体操をしてから白装束へ着替え、苔むした道を歩く。

青葉の滝までの小道

5分ほど登ると、木漏れ日を浴びた青葉の滝が、虹を抱くように流れていた。それは、数日前から不安や心配をしていた私の心に虹が掛かったかの様に思え少し安心した。

青葉の滝

滝の横には祠(ほこら)があり上部には不動明王と日蓮聖人の磨崖仏が彫られていた。私が辺りを見渡している間に住職は慣れた手つきで蝋燭を立て祈願の為の準備をしている。

青葉の滝・ほこら

準備が終わると太鼓を叩きお経を読み始めた。
辺りには、住職の低い声、滝の水の音以外の音は無い。おそらくこの音は、数百年変わる事のない音に違いない。遥か昔、修行をしていた行者に想いをはせる。

お参りをします
山口住職


お経も終わり、辺りは水の音だけに。「さぁ滝に入りましょう!」の声が掛かる。滝に目をやると一瞬ぶるっと震える。『ついにこの時が来たか』と意を決して白装束を勢いよく脱ぎ住職先導のもと、いざ滝へ。

青葉の滝で滝行

足が冷たい。滝は、虹で私の立つ位置を示している様だった。頭から滝に打たれ、顔から肩、足まで水が、流れていく。手を合わせ寒さを吹き飛ばす様に「南無妙法蓮華経」と腹の底から声を出す。軽く目を開けると木々の間から青空が、見える。どれくらいの時間お経を唱えたのだろう。頭から首筋の辺りが痛い。足も震え出して来た。

青葉の滝で滝行

これ以上滝に打たれたら歩いて帰れ無くなると思い頭を下げ滝から出た。直ぐに服に着替え参道を下りる。


山を下り寺に戻ると暖かい日差しが差していた。「あったかい」…心から出る言葉だった。本堂に戻ると住職から温かいお茶を頂いた。体の中も温まった。

滝行のあとの穏やかな瞑想の時間

休憩の後マインドフルネス瞑想を教えて頂いた。住職導きの元、目をつぶり呼吸に意識を向ける。背中にあたる日差しが暖かい。心の中は、滝に打たれたせいかとても軽く、はっきりしている。膝の上に手を軽く乗せ、軽く目を閉じただ呼吸に意識を向ける。ゆっくり鼻から息を吐く。

マインドフルネス瞑想

外では小鳥が鳴いている。風が、身体を通り抜けて行く。ただそれだけの時間だった。30分程経っただろうか。住職の「目を開けて下さい」の言葉で目を開け手を合わせ頭を下げた。


今まで何度か瞑想をした事があったが、モヤモヤする事が多かったが、今回は心が軽く身体がポカポカしていた。気持ちも良い。これで滝行は、終了した。

青葉寺

最後に住職は、私にこんな事を言った「良い心も悪い心も皆にあるのです。それで良いんです。そんな自分を知り受け入れる事が大切なのです」その言葉が、帰りの車でいつまでも私の心に響いていた。

青葉寺
所在地:奈良県宇陀市室生三本松3748-2
アクセス:近鉄電車「三本松駅」より徒歩約20分/名阪国道「道針IC」より、車で約25分
申込方法
滝行の開催日、志納料、スケジュールなど詳細は青葉寺公式ウェブサイト でご確認のうえ、お申込みください。
関連リンク
青葉の滝と青葉寺