ザビエル、滝打たれに挑戦

赤目四十八滝で滝打たれが体験できると初めて聞いたとき、僕はもう行きたくてうずうずしていました。もともと僕はのんびりした暮らしを好むタイプで、以前ニュージーランドのミルフォード・サウンドでも似たような体験をしたことがあります。世界中には自然を敬う文化がたくさんありますが、特に「水」は命の源として、とても大切な存在だと思います。流れる水は、心・体・魂を清め、浄化するものとして使われてきました。神道と同じように、マオリ文化にも滝を神聖なものとして敬う伝統があります。マオリの伝説では、タニファ(守護霊)が滝に住んでいるとされていて、神道では、滝のような場所には神々や偉大な霊が宿ると信じられています。

Senju Falls / 千手滝
写真は千手滝。このような場所には、間違いなく神聖なエネルギーが宿っているに違いありません。

のんびりした暮らしが好きな僕にとって、自然の中での瞑想には、心の奥深くに響く魅力があります。日常から少し離れて、ただ静かに立ち止まり、自分自身や自分の思考と向き合う時間。そんな時間が、周囲の命のざわめきの中にあることが、たまらなく心地よいのです。
でも、異国の地、見慣れない自然の中で、果たして僕は同じように心を通わせ、自分自身とつながることができるのだろうか——それとも、まったく違う感覚になってしまうのだろうか。

そんなとき、仕事の一環としてその滝打たれを体験できるチャンスがあると聞きました。それで僕がどうしたかって? 迷う理由なんてひとつもないし、すぐにでも行きたい!と、心はもう飛び出しそうなほどワクワクしていました。

Akame Valley / 赤目渓谷

赤目四十八滝には、仕事でもプライベートでも何度も訪れたことがありますが、実は大日滝には一度も行ったことがありませんでした。これまで、大日滝は観光パンフレットや広告の写真でしか見たことがなく、写真では確かに迫力があるものの、実際がどんな感じかまでは想像できませんでした。

大日滝は、通常のハイキングトレイルから外れた場所にあります。そもそも大日滝へ行くルートのスタート地点にたどり着くのにも、川の上に並んだいくつかの岩を「ホップ、ステップ、ジャンプ」と飛び越えて渡らなければなりません。運動神経にあまり自信のない僕ですが、ゆっくりなんとか渡ることができました。

ここまで来たんだから、もう大変なところは終わりだよね?

ちょっとした登り道があるとしても、他の道と同じように、手すりがついていて歩きやすい道なんだろうな……そう、きっとそうに違いない……よね?

Dainichi trail / 大日滝へ
ネタバレすると……いや、ぜんっぜんそんなことはありませんでした。

僕の甘い期待は、あっさりと打ち砕かれました。案内されたのは、険しくて、自然のままの山道だったのです。道案内となるような手すりはどこにもなく、道中ずっと岩をよじ登って進まなければなりませんでした。その岩には苔がびっしりと生えていて、長年の人の往来で表面はすっかり滑らかになっています。僕はずっと、足を滑らせて転げ落ちて、せっかくの苦労が台なしになるんじゃないかという不安と隣り合わせでした。

自分の力でたどり着くしかない!滝打たれを体験したいのならそれなりの覚悟と努力が必要だってこと。

Dainichi trail / 大日滝へ

ガイドさんは、このような道を軽やかに駆け上がっていくんです。しかも僕たちの荷物などが入ったバケツを背負いながら。僕もこの道にもっと慣れていれば、ガイドさんのように登れたのかもしれませんが、残念ながら僕は、ただひたすら必死に登り、ようやく滝までたどりつきました。

そしてそこで僕を迎えてくれた景色は、その苦労すべてが報われるほど素晴らしいものでした。

Dainichi Falls / 大日滝

やっとの思いで登りきった先で、僕たちを迎えてくれたのは、大日滝とその息をのむような景色でした。木々の梢をはるかに超えて流れ落ちる大日滝は、細く長く、やがて浅い滝つぼへと注がれ、そこから透き通った小川が静かに遠くへと流れていきます。

その神聖な空間の中で、僕はただ静けさに包まれていました。全身でエネルギーのようなものを感じながら、ここを見つけた昔の人たちは、どんな気持ちだったんだろう——僕はそんなことを想像してみたりしました。

まだ滝の下に立つ前の段階で、僕はもう確信していました。この場所は、あのニュージーランドでの瞑想と同じように、自然との深いつながりを感じさせてくれる場所なんだ、と。自然とのつながりはすぐそこにあって、まるで僕に受け入れられるのを待っているかのようでした。

Dainichi Falls / 大日滝

こみ上げてくるスピリチュアルな感情の高まりに応えるように、僕は心の中に湧き上がる想いを解き放つ手段としてハカを披露しました。ハカと聞くと、多くの人がラグビーニュージーランド代表「オールブラックス」が試合前に披露する「カ・マテ」を思い浮かべるかもしれません。それも確かにハカですが、ハカは単なるスポーツ前の伝統舞踊ではありません。

ハカは、ゲストを歓迎する時、結婚式の場面、そしてマオリとしての文化的アイデンティティを表現する場面などで行われます。つまり、感情が高ぶるようなときに、自分自身を表現する手段として行われるものなのです。

この自然という素晴らしい空間でハカを通して感謝の気持ちを表したことで、まったく異なる二つの文化がつながったように感じました。まあ、僕はそのとき忍者の衣装を着ていたのでちょっと変な感じはしたんですけど(笑)、それがかえってこのつながりをより特別なものにしてくれたのではないかと思っています。

Dainichi Falls / 大日滝
ひっそりと隠れたこの大日滝の景色は、まるで自然と僕だけしか知らない世界のよう。

その日は「今日は暑いけれど、水は凍えるほど冷たいから覚悟しておいたほうがいいよ」と何度も言われました。最悪の事態に備え、ガイドさんの助けも借りながら、僕は滝の裏側にある小さなくぼみへと、慎重に足を進めていきました。そしてそこで、座って、または立ったまま滝に打たれます。

さんざん脅かされていたにもかかわらず、滝の水はむしろ心地よい冷たさでした。蛇口をひねったら冷たい水が流れ出てきた、そんな感じです。水が頭上から勢いよく流れ落ちてくる中で、僕が意識を向けられたのはただ一つ、呼吸を整えることだけ。

吸って、吐いて。
仕事のことも、日々のストレスも、すべてが遠ざかっていきます。
吸って、吐いて。
まわりの音も、いつのまにか静かになっていきました。
吸って、吐いて。
その瞬間、そこにいたのは、僕だけでした。
吸って、吐いて。

Meditation under waterfall / 滝打たれ
まさに、心が静まるひととき……

Meditation under waterfall / 滝打たれ

滝の下に立っていた、ほんの数分間。そのわずかな時間の中で、僕は心からの静けさを感じていました。僕は自然とつながり、自然もまた僕とつながっている——そんなふうに感じられる体験は、実際に味わったことがないと説明が難しいかもしれません。

とても個人的な感覚でありながら、不思議と誰にでも共通するもの。それこそが、瞑想の本質なのだと思います。心、身体、そして魂を見つめ直し、整える時間。瞑想は、きっとどんなときにも、どんな場所でも実践できるものだと思います。でも時には、いったん立ち止まって滝の下に立ち、大自然の中に身を委ねてみるのもいいのではないでしょうか。

もし東奈良名張を訪れることがあれば、ぜひこの素晴らしい自然を体験し、忘れられないひとときを過ごしてみてください。

Resting at Akame 48 Waterfalls / 赤目四十八滝で一休み
この瞬間を、きっとずっと心に刻んでいくことでしょう。