ぜいたくなアート空間、室生山上公園を堪能

木々の緑がますます濃くなってきて、車で走っていると窓を開けながらカーステレオのボリュームも1段階アップしてしまう、そんな季節になりました。

その日は平日でしたが、あまりにも天気がよく、ちょっとぜいたくなお昼ごはんがてら公園でも散歩しに行こう!ということで、友人と室生(むろう・奈良県宇陀市)に行ってきました。午前10時に名張(三重県)を車で出発。30分ほどで女人高野 として有名な室生寺へと続く参道付近に到着しました。まだランチには早いので、先に散歩しに“公園”に行こうということになりました。

目指す目的地は「室生山上公園芸術の森」。山上公園は「さんじょうこうえん」と読みます。“公園”といってもみなさんが想像する公園ではありません。7.8ha(東京ドームの1.6倍以上)もある敷地全体が屋外アート空間で、最近ではインスタ映えスポットとしてじわじわと人気を上げてきています。

公園全体がオープンエアミュージアム

入り口で入場料を払い、さっそく園内に。入った途端、緑の山、生い茂る木々、そして美しく整備された空間に思わずため息が…。

そして進んでいくと…

実際に中に入ることができる「螺旋の竹林」。右は中から出てきたところ

Spiral Water Channel / 螺旋の水路
「螺旋の水路」の水路には実際に水が流れています

広い敷地に点在する存在感のあるモニュメントにまず圧倒されます。オブジェと周りの自然とが調和して、どこまでが創られたアートなのかどこまでが元々ある自然なのか境目がわかりません。いや、境目なんてなくて、グラデーションのように作品と元々の自然が融合していっているんですね。それもそのはず、「室生山上公園芸術の森」は、「自然と文化の調和」をシンボルとした空間で、建造物が自然地形に溶け込むように作られているのです。なるほど。なんだかふと日本庭園に見られる借景を思い出したりしました。

また、周りの森はただの山かな?と思いきや、木質チップでできた遊歩道が整備されていてとてもきれい。歩いていてふかふかと心地よく、かといって見た目は何の違和感もなく、なるほどここも「芸術の森」の一部だということがよくわかります。

Murou Art Forest / 室生山上公園芸術の森

彫刻家、ダニ・カラヴァン

周りの緑と違和感なく溶け込む赤茶色の不思議なモニュメントは、イスラエル出身の彫刻家ダニ・カラヴァンのによる作品です。彼の環境アート作品は日本以外の国々にもありますが、日本ではここの他に北海道と鹿児島にあるようです(ダニ・カラヴァン公式サイト より)。関西、東海地方にお住まいで彼の作品に興味のある方、ここ「室生山上公園芸術の森」は近いのでおすすめです。

それでは、彼の作品の中で私のお気に入りをご紹介しましょう。

第2の島(ピラミッドの島)

Isle of Pyramid / ピラミミッドの島

水辺に浮く島に建つ不思議なピラミッド。真ん中が空いていて、中に入ることができます。中に入ると、外のまぶしい真緑の景色とは一変してシーンとした暗い空間が目の前に現れます。外に向いていた意識が自分自身の内側へと引き戻される感覚。そしてふとピラミッドの切れ目から外をのぞくと…なんともファインダーからのぞいたように景色が切り取られていて、思わず何枚も写真を撮ってしまいました。

Isle of Pyramid / ピラミッドの島
“ピラミッド”の中から外を見たようす

第3の島(ステージの島)

Isle of Stage/ ステージの島
円形の部分がステージ。奥に見えるのが観覧席

第2の島から木製の道でつながっている島。ここはステージになっていて、ライブなどのイベントができるそうで、まわりには観覧席もあります。こんなところで音楽が聴けるなんてサイコーですよね! 2018年には、イスラエルつながりとして、イスラエル出身のバンドButterring Trio(バターリング・トリオ)が来日してここでライブを行いました。(残念ながら私は行くことができませんでしたが)。

太陽の島と太陽の道

Tower of the Sun & path of the Sun/ 太陽の塔と太陽の道

私は個人的にこの作品が一番好きです。階段状のモニュメント「太陽の塔」から伸びる道はこの地域に関係が深い「太陽の道」を表現しています。「太陽の道」は古代の太陽信仰と関係があると言われていて、北緯34度32分上に神社仏閣などの重要な信仰対象が並んでいるのです。例えば、三輪山、長谷寺(奈良県桜井市)、斎宮(三重県明和町)ほか、東奈良名張地域でも室生寺、倶留尊山(奈良県曽爾村)が「太陽の道」上に位置しています。それをモチーフにしたこの作品の「道」は実際に北緯34度32分を通っています。

Path of the Sun / 太陽の道
北緯34度32分上の「太陽の道」

古代からの太陽信仰が時を越えて現代アートと融合する、なんともダイナミックな作品ですよね。この作品をきっかけに、この地域の歴史、そして神秘的な側面をもっと多くの人に知ってもらいたい!と強く感じたのでした。

ここで紹介した3つの他にももっと作品があり、しかもほとんどのモニュメントは中に入ったり登ったりできるのです。作品を“体験”するためにもぜひ現地まで足を運んでみてください。


ランチの後、やっぱりはずせない室生寺

アートを堪能したあとはランチ! せっかく室生まで来たのだし、春は山菜の季節ということで山菜料理を食べることにしました。室生寺のすぐ近くには山菜料理が食べられるお店が2軒ありますが、今回は橋本屋におじゃましました(もう一軒は中村屋)。中に入ると、畳の間はすべて椅子席。これはいいですね! 畳に座るのが苦手な外国の人にはもちろん、高齢者にもやさしい(お年寄りって椅子に座る方が楽なんですよね)。

いただいたのは山菜定食(つつじ)。おだしのきいたやさしい味で、一皿一皿ゆっくりと素材の味を堪能しました。

左:写真の左方面すぐに室生寺があります/右:テーブルにはアクリル板が設置してあり、新型コロナ対策もばっちり

Wild mountain vegetable dish / 山菜料理
山菜定食(つつじ)、2,750円(税込)。もう少しお手軽なランチ限定の定食もあります

長めのランチタイムのあと、まっすぐ帰ろうとお会計をしていると、
「これから室生寺寄るんですか?」とご主人。
「いえ、もう帰ろうかなと思っていて…」と私たち。
「えぇ!?もったいない。きれいなシャクナゲぜひ見に行って!今年は早いからもうすぐ時期終るけど、特に今年はきれいやからちょっとでも見に行って来て!」
と言われ、そこまで言われたらなぁ〜、と室生寺にも行ってきました! その時の写真がこちら。

Murou-ji with rhododendrons / 室生寺とシャクナゲ

あぁ、来てよかった!ご主人の言うとおり! 最高の1日でした。

「室生山上公園芸術の森」への行き方

「室生山上公園芸術の森」には入口が2つあります。ビジターセンターのある南入口と管理棟のある北入口の2つです。どちらにも駐車場完備ですが、平日は北入口しか開いていないため、その日は北入口を目指しました。

室生山上公園北入口
Googleマップより。今回は北入口を目指しました(赤のマーカー)

室生寺の参道をゆるゆると車で行くと、参道から山側に入る細い道がいくつか現れ、そのうちの2つが南入口または北入口へと続く道になっていて、いずれにも「室生山上公園芸術の森↑」という看板が立っています。南入口を目指すときは室生寺の南側の看板を目印に、北入口を目指す場合は室生寺の北側の看板を目印に小道を上っていってください。数分くら狭い道が続きますが、だいじょうぶ、その道で合ってます。ちなみに、室生寺から徒歩で20分くらいだそうで、ハイキングの一環として歩く人はいるようですが、なにせ山道を登るので、自信のない人は清く車で行きましょう。

Murou Art Forest north entrance / 室生山上公園北入口
北入口にある管理棟。この建物の右手前に駐車場があります

 

室生山上公園芸術の森
所在地: 奈良県宇陀市室生181
アクセス: 近鉄・室生口大野駅下車、「室生寺」行バスに乗り、「室生寺」下車、徒歩20分/または近鉄・名張駅下車、レンタカーで30分/各地方面からのアクセスは下記公式ウェブサイトをご覧ください。
開園時間、休園日、料金などは下記公式ウェブサイトをご覧ください。
公式ウェブサイト
ダニ・カラヴァン
公式ウェブサイト(英語)
橋本屋
公式ウェブサイト
室生寺
公式ウェブサイト