曽爾高原の秋––ハイキングと幻想的な夕日を楽しむ1日

Soni Highland at dusk

近年、曽爾高原(そにこうげん)は夕日の名所として人気を呼んでいます。日没の一瞬、高原を覆うススキの穂に夕日が反射して広がる神秘的な世界を見ようと土日は駐車場がいっぱいになる程です。夕日とススキの響宴が見頃となる11月。奈良県の日没時間は午後5時頃です。美しいを「時」を待つ間、曽爾高原の見所をご紹介しましょう。

 

関西の人気ハイキングコース

Soni Highland
曽爾高原の玄関口。約38haの広大な草原が広がる

曽爾高原は、山から広がる広大な草原の名前です。倶留尊山 (くろそやま・1083m)から二本ボソ(にほんぼそ・996m)、亀山(849m)と続く稜線から広がる広大な草原です。三重県の名張市に接する奈良東部、宇陀郡曽爾村に位置し、大阪、京都、奈良から車でわずか1時間~1.5時間です。名古屋市からでも2時間程度と日帰り旅行にちょうど良い観光地です。

群生するススキや湿地の周りには遊歩道が整備されており、所々にお弁当を広げられるテーブル付きベンチも配置され、小さなお子さん連れでピクニックが楽しめます。その一方で、ちょっとハードなトレッキングに挑戦することもできます。

 

A path through the plateau
倶留尊山の頂上に至る登山道
Mt. Kuroso
倶留尊山は、日本300有山の一つ。二本ボソからの眺め

 

ちょっと怖い伝説もある湿地、お亀池

芝生の中央に「お亀池」と呼ばれる湿地(周囲400m)があり、時々水鳥の音が聞こえます。約50種の湿地植物が自生しており、大切に保護されています。目前の斜面を登って行くと、やがて池の全容が見えてきます。ヒョウタン型の湿地のほとんどがヨシで覆われており、中央部にわずかな水面が見えます。大蛇の化身をお嫁さんにした男の伝説もあり、古くからの、この高原と人との関わりが忍ばれます。

Pear-shaped Okame Pond
草原の中央にお亀池が見える。写真手前は、二本ボソに通じる道にある最初の岩場

 


二本ボソと倶留尊山

二本ボソの頂上からの眺めは抜群です。正面に倶留尊山。その隣には風力発電用の風車が林立する青山高原が見えます。さらに東に目を移すと伊勢湾の青い水面が遠望できます。曽爾村によると、年に一度か二度、早朝に富士山が見えることがあるとか。見られたら本当にラッキーですね。

Wind generator
青山高原の風車群は90基。日本最大級の風力発電所だ
Chita Peninsula
山越しに伊勢湾を望む

 

左側に目を移すと、名張市と伊賀市が見えます。両方の都市は忍者で有名です。名張市は車で約30分です。曽爾高原行きのバスは、特急列車が停車する近鉄大阪線名張駅から利用でき、大阪、奈良、名古屋からスムーズにアクセスできます。

Nabari City from Mt. Kuroso
山向こうは三重県。名張市街地が広がる

 

倶低山と軽く考えがちですが、倶留尊山に続く細い登山道は起伏が激しく、岩場が点在します。そのような場所では、設置されているロープやチェーン使って登ること、安全のために適切な靴と服を用意することをお勧めします。

Trail path in Mt. Kuroso
狭い山道が続く。足元にはさまざまな森の生き物が
Fallen leaves in Mt. Kuroso
落ち葉で覆われ、秋の深まりを感じさせられる

 

登山道には、視認性に優れた場所や木々が近づくエリアなど、さまざまな場所があります。朝露を蓄えるコケ、朝の太陽を反映した流れる雲に輝く森、カラフルな果物の植物、野生のキノコなど、変化する自然の美しさに触れることができます。

道端で見つかったキノコ

 

ガラス細工のよう。陽射しに映えるススキ

ススキの成長は年ごとに異なります。 私が訪れた10月中旬は、亀山側は特にきれいでした。ススキは、初秋でも強い陽射しを受けてガラス細工のように輝いていました。

Shining pampas grass
ススキの透明な穂。光に応じて美しく色が変化する
Pampass Grass
亀山へ続く斜面。ススキの白い穂が緑の草原を覆う。本格的な秋はもうそこまで

 

「お亀池」の周りにある200基のランプが点灯したら、それが夕日を眺める準備の合図です。「山灯り」と呼ばれるライトアップ・イベントで、観光客にススキと星空が織りなす神秘的な夜景を楽しんでもらうという趣向です。今年(2019)は11月24日(日)までです。照明時間は日没の少し前から午後9時までです。

山灯りがともり、夕日とススキのページェントが始まる

 

夕陽の絶景ポイントはいくつかありますが、オススメしたいのが、お亀池の側の広場。目の前にススキが一面に広がり、白い穂が夕陽に染まって、錦紗のローブがかかったような幻想的な風景を醸します。遠景の屛風岩など曽爾の山々のシルエットは、さらに写真を引き立てる素敵なアクセントになるはずです。

日没の瞬間。空、大地、人々、すべてが黄金色に染まる

 

太陽が遠くの山の尾根に近づくと、オレンジ色の輝きが広がっていきます。そして日没の一瞬、当り一面が黄金色の光で満たされます。半透明のススキの穂が夕日に輝き、金色のレースのベールが台地を覆います。

ススキのシルエットが美しい日没後の曽爾高原

 

黄金色は神秘的に紫色に変わるトワイライト・タイム

太陽が日陰に完全に隠れた後でも、ショーは終わりません。地平線は濃いオレンジ色を称えたまま、青色に深みを増す天空では星が輝き出します。そこに山灯りの優しい照明がススキを幻想的に浮かび上がらせます。

帰り道。ランタンに照らされた小道。曽爾高原は、一日中さまざまな表現を楽しめる

写真: 大谷徳幸

注意:

  • 日没後はランプが点灯していても非常に暗くなります。懐中電灯をお持ちください。
  • 天候の急変、気温の低下にそなえた服装でお越しください。
  • 食料、水を携帯することをおすすめします。
  • ゴミはお持ち帰りください。
  • 駐車場にトイレはありますが、高原内にはありません。
  • 曽爾高原ファームガーデンは、温泉、レストラン、お土産や特産品をあつかうショップがある複合施設です。曽爾高原入り口より徒歩で約30分、車で5分くらいのところにあります。営業時間など詳しい情報はこちらまたは下記のリンク先をごらんください。

所在地
奈良県宇陀郡曽爾村太良路

駐車場
600円より (野口駐車場または曽爾高原ファームガーデン)

アクセス
公共交通機関: 近鉄名張駅下車。名張駅西口1番バスのりばより山粕西行きのバスに乗車。太良路で下車、徒歩50分。
10月1日から11月30日まで、曽爾高原行きの臨時バスが上記バス停より運行されます。

車: 名阪国道、針I.C.よりおよそ45分

リンク
曽爾高原公式サイト
曽爾村観光協会内のページ
曽爾高原ファームガーデン