【東奈良名張やまなみライド】晩秋の世界遺産へ。吉野・大宇陀 歴史グルメライド

100km超えのロングライドに挑戦。晩秋の世界遺産 吉野山を目指します。

癒しの里「名張の湯」を起点に、赤、黄、橙色に染まる秋の吉野山や大宇陀(おおうだ)室生(むろう)ダムを満喫。吉野山では名物の葛餅や葛切りに舌鼓!薬の町・大宇陀では、薬草を使用した創作料理が人気のカフェを訪れます。

宇陀松山の大宇陀温泉「あきののゆ」を起点に、東吉野、吉野を巡るライド(走行距離約70km)もおススメ。また、吉野山や宇陀の又兵衛桜など桜の名所も目白押しなコースなので、春のライドも感動的です。

「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら

吉野山

行 程 名張の湯=室生ダム=墨坂神社=八咫烏神社=ひよしのさとマルシェ=吉野山(金峯山寺)=津風呂湖=大宇陀(ヒルトコカフェ、道の駅「宇陀路大宇陀 阿騎野宿」)=宇陀松山=室生ダム=名張の湯
走行距離 130.4 km
獲得標高 1,290 m ※実走値
実施日 11月28日 6:30~17:30
難易度 ★★★★★(筆者による目安です)
詳しいコースガイドはこちら(PDF:3.2MB)
目次

名張の湯から国道165号経由で室生ダムへ

 

夜明け前の午前6時過ぎ、地元自転車チームSMAのスター(右)と会長(左)と、筆者の3人が癒しの里「名張の湯」から世界遺産の吉野山を目指します。

国道165号を西進。朝が早く、車も少なめです。交差点「室生寺入口」を左折し、室生ダムへ向かいます。

室生ダム湖畔は車がほとんど走っていなかったので、静かな森の中をゆったりと気持ちよく走れました。ダム堤体付近には展望台やトイレがあるので、立ち寄ります。ダム湖に架かる橋を渡ることなく、しばらく直進すると坂道が現れます。登り切ると広い道をダウンヒル。「平成榛原(はいばら)子供のもり公園」が右手に見え、榛原(国道369号)へと抜けていきます。

 

神社を巡り「ひよしのさとマルシェ」へ

 

国道369号をしばらく走ると宇陀川沿いの細い道へ左折し、墨坂神社方面へ。道路に立っている2つの赤い鳥居をくぐって坂を駆け上がると墨坂神社があります。

墨坂神社は日本最古の健康の神を祀るとも言われる由緒深い神社。道中の安全はもちろん、最近、足腰が弱りつつある私たちは、「いつまでも健康で自転車に乗り続けられるように」とお祈りしました。

宇陀川沿いを走っていると、右手に「オークワ サンクシティ榛原店」が見えてくるので、左折し県道31号へ。右手に大きな鳥居が見えてくるので、右折して鳥居をくぐります。

そこは、八咫烏(やたがらす)神社といって、その名の通り八咫烏を祀る神社です。八咫烏とは、三本足のカラスで導きの神。初代天皇とされる神武天皇を熊野から宇陀へと導き、大和平定に貢献したとされ、その後軍神と崇められているそうです。

サッカー協会のマークにも八咫烏が描かれているので、この神社には、サッカーファンも多く訪れているのだそう。神社には珍しくサイクルラックも設置されていて、サッカーファンだけでなく、サイクリストにも愛されている神社だということが分かります。トイレもあります。

ここでは、八咫烏像の頭に乗せられたサッカーボールをなでながら、道中の安全と、自転車レースの必勝を祈願しました。

八咫烏神社からは、近畿のマッターホルンと呼ばれる円錐型の高見山がくっきりと見えます。調べてみると、高見山山頂にある高角神社にも、八咫烏が祀られているそうです。また、高見山はこれから向かう吉野の清流を育む霊地とされていたりと、古来より脈々と続く歴史ロマンを感じさせてくれます。

国道166号を南下し、東吉野を目指します。10kmほど山中を走ると短いトンネルがあり、このトンネルを抜けてすぐ右手にあるのが小さな道の駅「ひよしのさとマルシェ」です。サイクルラックも設置されています。東吉野村周辺の特産品が所狭しと並びます!イートインスペースもあるので、焼きたてパンと名物の草餅を購入。パンは店内で焼かれているので焼きたてをいただきました。

ここでは、うどんや名産の「たあめん」も食べることができます。「たあめん」は、簡単に言えば、そうめんの太いやつ。山あいの湧き水と良質の小麦粉に吉野本葛を加え、昔ながらの手延べ法で、一本一本、手作業により大切に造られます。手延べ麺特有のなめらかな舌ざわりと強いコシが魅力だそうです!次に訪れる際は、ぜひ食べてみたい逸品です。

 


いざ、世界遺産へ

 

「ひよしのさとマルシェ」からは、走ってきた道を少し戻ってから方面へ。高見川沿いを走っていると右手にニホンオオカミ像があります。

実は、東吉野村は日本オオカミ最後の棲息地として知られていて、明治38年(1905年)に同村の鷲家口(わしかぐち)で捕獲されたのを最後にニホンオオカミは絶滅したとされています。捕獲されたオオカミは現在大英博物館にあって”採集地ニホン・ホンド・ワシカグチ”と記録されているのだそう。それだけ、ここが自然豊かな地である証拠なのでしょう。

像の前で、なぜか私たちもオオカミの気持ちになってきまして…

清流のせせらぎの音を聴きながら高見川沿いを走り抜け、国道169号を橿原・五條方面へ。高見川の上流にあって吉野の清流をはぐくむ高見山は、冬になると山頂のブナ林は霧氷で覆われ、多くの人で賑わいます。高見山の霧氷のようすはこちら「高見山、絶景樹氷の世界レポート」をご覧ください。

高見川は吉野川へ合流します。川幅が広くなり、開放感があってとっても気持ちいいですね。夏になると、河川敷にはバーベキューを楽しむ人も多く見られます。吉野川にはたくさんの橋が架かっていますが、今回は桜橋を渡りました。

桜橋を渡って右折。吉野山を目指し、趣のある街道を走ります。踏切を渡ってすぐに左折すると、ルートは分かりやすいのですが、交通量が多いので、今回は一旦、奈良・橿原方面へ進んでから林道(県道15号)を通って吉野山を上ります。こちらは、道が細く、分岐も多いので、事前に地図をしっかりと確認しておいてください。林道の斜度は大きくはありませんが、細い道なので対向車に気を付けてください。

吉野山では5kmほど坂を上りますが素晴らしい紅葉を見ながらだとペダリングも軽くなるというものです。

吉野と熊野を結ぶ修業の道は「大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)」と呼ばれ、2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」が、ユネスコの世界遺産に認定されました。吉野山は山全体が世界遺産として登録されています。

金峯山寺(きんぷせんじ)の門前町へと坂は続き、眺望も開けてきます。ここは歩行者が多いのでゆっくりと注意しながら進みます。国宝の金峯山寺仁王門は大改修中で、蔵王堂(ざおうどう)は防災施設整備工事中でした。

金峯山寺の本堂である蔵王堂は、国宝であるとともに、仁王門、そして境内地とともに世界遺産の中核資産に登録されています。私たちは、世界に誇るべき文化遺産をライドできる素晴らしい環境にいることに改めて気付かされます。

蔵王堂のすぐ近く「お食事処やっこ」で吉野名物に舌鼓。吉野葛を使った葛切り、葛もちはもっちもち。さくらロールは甘すぎず、柿の葉寿司は上品な味。実に、バラエティに富んだ軽食となり、時間がたつのも忘れ話も弾んでしまいました。

なお、葛切りと葛餅が目的なら、近接の「葛屋 中井春風堂」もおススメ。葛の説明もしてくれます。ただし、予約が必要だとのことでこの日はいただくことができませんでした。ほかにも、門前町は、お豆腐ソフトやケーキ、生くずもちなど、食べ物の誘惑が止まりません…。

金峯山寺を後にして、大宇陀を目指し、吉野山を下っていきます。春は吉野山一面が桜で覆われると思うと、また訪れたくなります。坂を下ると、近鉄吉野駅があります。

 

津風呂湖経由で大宇陀の農家レストランを目指します

 

国道169号を東へ。来た道を戻りますが、大宇陀方面(県道28号)へは左折せず直進し、津風呂(つぶろ)方面(県道256号)へ。津風呂湖は農林水産省管轄の灌漑用ダム。ワカサギ釣りなどが有名なようで、多くの釣り人で賑わっていました。

国道370号に合流して大宇陀までは約10kmほど坂が続きます。斜度が大きいわけではないのですが、ボディブローのように、だんだんと疲労が蓄積されていくのが分かります。

ヒルトコカフェ」にたどり着いたのは14時過ぎ。「ランチ14時まで」となっていたので、おそるおそる「まだいけますか」と尋ねると「大丈夫です」とのこと。ありがたい!

「ヒルトコカフェ」は、古民家を改装したノスタルジックで開放感あふれる空間のカフェ。「大和トウキ」など身近な薬草や地元野菜を使ったランチやデザートが人気です。休日は、いつも混んでいるそうですが、この日も満席だったので、30分ほど待ってようやくランチタイムとなりました。

3人とも、きまぐれランチ(1,980円)を注文。

いやー、待った甲斐がありました!

「シャキシャキ感がたまらんな」「この甘さはもはやデザートやな」―—。おじさん3人が、かごに入った野菜のおいしさを語り合ったり、調理方法に感心したり。メインの「ゴロゴロ野菜とホタテフライのクリームソースグラタン」からは、カリフラワー、じゃがいも、かぼちゃにサツマイモなど、野菜が次々に出現し、「次は何が入ってるんやろ」と実に楽しいひととき過ごしました。

気軽に薬草を食べてもらえるようにとランチに使われている「大和トウキ」。緑色のパセリのようなもので、スープなどにも入っていました。

宇陀は飛鳥時代から続く薬のまちで、宇陀松山地区周辺には、ほかにも薬膳料理を食べられるところがたくさんあります。詳しくは「宇陀松山地区周辺 薬草観光/薬草料理店のご案内(PDF)」をご覧ください。紅葉が有名な大願寺でもいただくことができ、胡麻豆腐や葛の刺身、薬草天ぷらなどが好評です(要予約)。さらに、大宇陀温泉「あきののゆ」には薬湯もあるんですよ。

写真で乾杯している飲み物は、私たちが持つともはや「焼酎お湯割り」にしか見えませんが、「エルダーフラワー」というマスカットに似た甘い香りが特徴のジュース。普段はあまり行かないおしゃれカフェでのランチは、こうした新しい出会いばかりで、おじさんたちも十分楽しませてくれました。

ただし、人気店のため、休日は入店まで少し待ったりもするので、残りの走行時間を考えておきましょう。特に冬は暗くなるのが早いので…。

 

大宇陀を散策してから帰路

 

帰路は、近くの道の駅「宇陀路大宇陀 阿騎野宿」に立ち寄ります。足湯も楽しめ、宇陀の名産みやげやレストランも。「大宇陀温泉あきののゆ」帰着のライドにすれば、ここでゆっくりできそうです。

名張の湯帰着の私たちは、そろろろ日没の時間が気になってきました。

道の駅からすぐの宇陀松山に立ち寄ります。宇陀松山は、2006年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された、古いまちなみが今も残る町。懐かしいものが並ぶ店の軒先、カフェや酒蔵、和菓子屋、薬草園も。ゆったりとした時間が流れています。

桜の季節のサイクリングロード

うだ・アニマルパーク」付近から榛原まで、サイクリングロードが整備されています。ただし、路面に砂利があったりするので、ゆっくりと走ってください。春は桜並木が続く名所です(春の写真参照)。ここからは、室生ダムへと折り返し。本当は、ゆっくりと散策したいところですが、そろそろ日も暮れかかってきたので、先を急ぎ、なんとか日が落ちる前に室生ダムを走り抜けることができました。国道165号を横切り、直進。三本松の街道を抜けていきます。

名張の湯へは17時30分ごろに到着。すっかり日が暮れていました。冬は日が短いので注意が必要ですね。今回は吉野山やカフェでゆっくりし過ぎたかも…。お疲れさまでした。