斜度20%を超える異形の坂や上弦の坂が次々と襲い来る――。そこは、まさに鍛錬の道。そのペダルで肥満を断ち切れ!!
…というわけで、今回は、幾多の坂を上って脂肪を燃焼させつつ「鬼滅の刃」で話題となった柳生一刀石を目指す「キツメのライド」。ヒルクライムの極意「激坂の呼吸」も合わせてお伝えします。
もちろん、脂肪燃焼ばかりではなく、眺望抜群の高山・布目・上津の3つのダム湖や1万本の梅が咲き誇る関西屈指の梅林「月ヶ瀬梅渓」、ひつじの公園「めえめえ牧場」、星の位置どおり巨石を配置したと考えられる「神野山(こうのやま)」など魅力的な名所が盛りだくさんのコースです。
・「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら
・このページの掲載内容は公開当時の情報です。
行 程 | 名張の湯=月ヶ瀬湖=柳生一刀石=布目ダム=めえめえ牧場=映山紅=上津ダム=名張の湯 |
走行距離 | 71.3 km |
獲得標高 | 1,174 m ※実走値 |
実施日 | 12月19日 7:30~14:00 |
難易度 | ★★★★☆(筆者による目安です) |
詳しいコースガイドはこちら(PDF:3.1MB) |
- 目次
脂肪を燃やす「坂狩り」が向かうのは…
お腹の脂肪を落としたいおじさん4人が「名張の湯」に集合!
今日走るのは、脂肪を燃焼するために数々の試練が待ち受けるヒルクライムコース。「鬼滅の刃」で知られる柳生一刀石、そして、24%の激坂を擁する神野山を目指します。メンバーの中には坂道を上る極意「激坂の呼吸」をマスターした「坂狩り」も含まれるので、乞うご期待!
スタートして5分もたたないうちに、名張川沿いのコンビニに立ち寄ります。何をするのかといえば…
そうです。補給食を買っておくのです。
いやいや、それではダイエットにならないのでは?と思った方は注意してください。エネルギーが不足すると「ハンガーノック」と呼ばれる低血糖の状態に陥り、身体が動かなくなってしまうのです。
ロードバイクなどで長距離、特にヒルクライムを続ける場合は、思っている以上にカロリーを消費します。自転車に乗り始めた初心者は特に「頑張りすぎてしまう」ので気を付けてくださいね。
突然ガクッと力が入らなくなることもあるので、空腹を感じる前にこまめに補給することが大切。ゼリー飲料や固形食、ようかん、チョコレート、大福など少量でカロリーが高いものは効率が良いのでおススメです。
壱ノ坂
コンビニから名張川沿いを6kmほど走ると、一つ目のヒルクライム区間へ到達(2.6km/獲得標高122m)。
調子はいかがですか~?
みんな、スイスイと元気に上っていきます。道を下って国道25号へ。右折して月ヶ瀬方面へ向かいます。なお、名阪国道も国道25号ですが、こちらは旧の国道25号と呼ばれます。
関西屈指の梅林
国道25号を東へ進めば、ゆるやかな坂道が続き、高山ダムでできた月ヶ瀬湖を右手に走ります。
湖周辺は1万本もの梅の木が立ち並ぶ「月ヶ瀬梅渓」。
関西屈指の梅林として有名で、700年前に吉野に南朝を開いた後醍醐天皇が植えた梅が起源とされます。2月中旬ごろから3月末にかけて「梅まつり」が開催され、4月上旬には2,000本もの桜が咲き誇ります。
また春になれば走りたいですね。
赤い吊り橋(八幡橋)が見えてくると、レイクビューが楽しめて食事や買い物もできる道の駅のような施設「湖畔の里つきがせ」がありますので、トイレ休憩とします。
弐ノ坂
ダム湖から柳生方面へ分岐する道(県道4号)があり、左折すれば、すぐに、第2のヒルクライム区間へ(3.4km/獲得標高146m)。
しばらく平坦道が続いていたので、この日が「キツメのライド」であることを思い出させられます。
参ノ坂 剣豪の里柳生にあった「異形の坂」
県道4号沿いを布目川沿いに進み、国道369号に入り南進すれば、柳生のまちなみ。柳生といえば、剣豪の里。旧柳生藩陣屋敷など数々の史跡が点在します。(参考:柳生観光協会)
国道沿いのバス停留所「山脇」の先の交差点を左折し、林道へ向かえば、最大斜度22%の激坂へ。途中でくねりと曲がる、まさに「異形の坂」です。
全集中でペダルを踏み込め!
「激坂の呼吸!壱の型!内歯車!」
「坂狩り」として、特殊な呼吸法を会得している監督(コウ)は、激坂を制するための最も基本的な型「内歯車」を繰り出します。いわゆる「軽いギア(インナーギア)へ変速」する技です。
ほとんどのロードバイクには、前2段の変速が付いていて、それぞれ大きい方をアウターギア、小さい方をインナーギアといいます。激坂を上り切るには、軽く走れるインナーギアを有効に使えるかどうかが重要なカギとなります。
一方、呼吸法を会得していない会長(サチ)は足をついてしまい、悔しいご様子。
よもや、よもやだ。
会長として不甲斐なし!
穴があったら!
入りたい!!
すると坂の上から、監督(コウ)から会長(サチ)に的確なアドバイスが!
「判断が遅い!」
どうも、インナーギアに切り替えるタイミングが遅れてしまったようです。ヒルクライムには、「ペダリングがキツくなる前に、早め早めの変速をする」ことが求められるのです。
続いて、スター(ホーリー)の厳しい声が林道に響き渡りました。
「ギアを切り替えられなかったのは、会長の覚悟が甘いからだ!」
激坂を上るには、それなりの覚悟も必要なのでしょう。
天乃石立神社(あめのいわたてじんじゃ)の鳥居までは上りが続き、そこから先は歩いて進みます。2~3分もすれば、天乃石立神社。本殿がない代わりに3つの巨石がご神体となっています。
神社の奥をさらに進めば、一刀石です。
柳生新陰流の開祖、石舟斎(せきしゅうさい)こと、柳生宗厳(やぎゅう・むねよし/むねとし/そうごん)」が、天狗を相手に剣術を修行し、一刀のもとに天狗を切り捨てたところ、2つに割れた岩石が残ったと伝わります。
いまは、観光客のために刀やカメラスタンドなどが置かれています。
ここで「プランク」の修業が始まりました。いたずら天狗が背中に乗ってくるので注意が必要です。
「ツアーオブジャパン奈良ステージ」の舞台となった布目ダムを南下
厳しい修行を終えると、林道を戻り、先ほどの集会所を左折。国道369号へ戻り布目ダムへ向かいます。柳生の山里は、のんびりしていていいですね。
国道から県道172号へ分岐し、布目ダム方面へ進みます。布目ダムへ到着すると、トイレ休憩も兼ねて補給食を忘れません。
元気回復!!
布目ダムは「ツアーオブジャパン奈良ステージ」の周回コースにもなっていたので、ぐるっと一回りしてみるのもいいですね。(参考:布目ダム周辺サイクルマップ)
肆ノ坂 神野山で牙をむく「上弦の坂」
湖畔を南下し、突き当りを左折。県道80号へ。
ここからが、第4のヒルクライム区間。神野山(こうのやま)にある「めえめえ牧場」を目指します。(3.2km/獲得標高262m)
待ち受けるのは、このコース最長にして最大の坂。ご武運を!!
神野山方面へ右折して県道272号へ。神野山を上っていきます。
長い上りで苦悶の表情を見せる会長(サチ)。しっかりと脂肪が燃焼していますぞ!
景色が開けてきました。
ヤッホー!!…とか言ってる気力はありません。
クライマックスは、県道から右折してめえめえ牧場へ向かう坂!コース一番の最大斜度24%の激坂。いわゆる「上弦の坂」が待ち受けます。
ここにきて、この斜度はないでしょ~!
「激坂の呼吸!弐の型!前方座面!」
実はスターも特殊な呼吸法を会得していて、サドルに座る位置を先端に変える「前方座面」を披露。サドルの前の方に座って坂を上ると、ペダルが回しやすく体重がかけやすくなり、20%超えの激坂もド派手に制することができます。
「激坂の呼吸!参の型!立漕ぎの舞!」
出ました!監督(コウ)の得意とする呼吸法「立漕ぎの舞」。
巷では、「ダンシング」と呼ばれる立ち漕ぎで一気に坂を上ります。ポイントは、身体を振らずに自然な形で“車体”を振るようにすること、そして、しっかり前を見ること。ただし、相当力を使いますので短時間の勝負。「ダンシング」と「シッティング」をうまく組み合わせながら、坂を上っていきましょう。
あれっ、坂の途中で、会長(サチ)がなにやら話しかけてきます。
素晴らしい提案をしよう。
お前も足をつかないか?
ヒルクライムの極意、それは、決して折れない心をもつこと。そう、会長(サチ)から教わった気がします。
そのままススめぇ~。ひつじたちも応援してくれます。最後まで上れば展望台があります。
お館様、ついに「上弦の坂」を上りきりましたよ。素晴らしい景色が、心を癒してくれます。
ハプニングは旅につきもの!?
めえめえ牧場を出て右折。しばらくすると、「鍋倉渓(なべくらけい)」があります。神野山の山腹に、長さ約650mにわたり黒い岩石が並んでいて、地質学的にも珍しく貴重な景観なんだそうです。
実は、鍋倉渓を「天の川」に見立てると、北極星や夏の大三角形などの位置に巨石が配置されていることから、「神野山」の名のごとく、古代人が信仰の対象としていたのではないかと考えられています。
一刀石や天乃石立神社もそうですが、この辺りは、巨石や山などの自然物に対する信仰の跡が今も多く残り、古代ロマンを感じるパワースポットが点在するコースと言えます。(参考:神野山は古代人が作った地上のプラネタリウム?)
鍋倉渓のすぐ近くに「からす天狗」のモニュメントがありました。
からす天狗は、神野山に住んでいるといわれています。山添村のマスコットキャラクターにもなっていて、その名を「てんまる」といいます。「てんまる」は、鍋倉渓が大好きなんだそう。
さて、鍋倉渓からすぐの「映山紅」に到着です!素晴らしい景色と地元産の素材を生かしたランチが我々を待ち受けます。カロリーを消費した分、あったかくて、おいしいもん食べるぞ!!
しかし、この日、「映山紅」は開いていませんでした。営業日にはテラス席で抜群の眺望を楽しみながら食事をいただけます。
隣にある野菜や特産品などが売られている「みどり屋」を覗いてみると…豚汁に、おこわに、おやきだって~!!
寒さに震え始めていた我々は救われました。紙コップに入った豚汁(100円)がめちゃくちゃあったかいわ~!!
通常はテーブルや椅子はありませんが、お客さんも少なかったことから店員さんが出してきてくれました。おもてなしも、すっごくあったかいんだから!!
うまい!
うまい!
うまい!
なんと6つの味から選べる「おやき」は、いずれも地元の畑で収穫した新鮮野菜が使われています。しかも、1個120円とリーズナブル!
「おばちゃんに、どれがおススメ?」と聞けば、「どれも自信作やで」とのこと。
どれも、焼きたてで本当においしかった~!また買いに行こっと。
映山紅は閉まっていましたが、地元のおばちゃんの親切に触れることができました。こういうのって、「旅の醍醐味」っていうんでしょうね。
神野山の茶畑を下っていきます。この辺りは大和茶の産地でもあります。
下りきったところを左折。県道214号を東へ県道214号から分岐して上津ダムへ向かうのですが、右折する道が分かりにくいので注意してください。
突然、上津ダムの手前で、私の自転車がリム打ちパンク。リム打ちパンクとは、段差に勢いよく乗り上げた際などに、段差(グレーチングなど)とリム(ホイールのふち)の間にタイヤとチューブが強く挟まれることで発生するパンクで、空気が少ないと発生しやすくなります。今回は、しっかりと空気を入れてきたので、きっと勢いがよすぎたんでしょうね。。
こういうときのために、修理道具を携帯することが必須です。
仲間の協力でなんとかパンク修理できました。こんな山の中で一人だったとしたら…。頼れる皆さんに感謝!
上津ダム湖は、眺めの良い西側から回っていきます。ダム堤頂道路を進めばトイレやダム湖を一望できる展望台もあります。
上津ダムより県道80号を名阪国道方面へ。名阪国道をくぐって直進します。
伍ノ坂 最後の試練
県道80号を名張方面へ右折。ここからは来た道を引き返します。そこは、往路で下った道。そうです。最後のヒルクライム区間となります。(1.7km 獲得標高71m)
距離は短いですが、疲れていますからね~…最後の力をふり絞って上り切りましょう!
坂を下り切ると名張川沿いを進みます。名張川のせせらぎが無事の帰りを祝福しているかのよう。川沿いは心地よい風…ではなく、強風のときもあり、なかなか堪えます。
ようやく「名張の湯」へ戻ってまいりました!お疲れさまでした。いやー、上りましたね~。きっと、皆さん痩せたことでしょう!
忘れられがちですが。ヒルクライムは、結局のところ、自身のウエイトを軽減することが求められるのです。(消費カロリー/約2,700kcal)
その後、「名張の湯」の中にある京都祇園「天壇」のお肉が提供されるレストランで、焼肉をがっつり食べて、走る前より体重が増えたとか増えなかったとか…。脱衣場の体重計だけが真実を知っています。(獲得カロリー ????kcal)
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