榛原(はいばら・奈良県宇陀市)を出発点として、奈良県曽爾村を通り、三重県との県境、丸山公園(奈良県御杖村)までのルートです。
大和と伊勢神宮を結ぶ、伊勢本街道。古代、天照大神の鎮座の場所を求め、倭姫命が旅した道とも重なり、各地に伝承が残っています。そのため「神の御心に叶う道」として多くの参詣者に利用され、参宮本街道の名でも呼ばれてきました。南北朝以後、伊勢の国司・北畠氏が上多気(現在の津市美杉町)に本拠を構えたことを機に、伊勢本街道は奈良や吉野への道として整備され、さらに多くの人々に利用されるようになります。一方で、伊勢神宮への最短ルートである反面、険しい峠を越えたり、川を渡ったりと難所が多いことでも知られました。国文学者・本居宣長も大和の旅の帰りに伊勢本街道を通ったとき、大変な苦労をしたことをその日記につづっています。
東奈良名張エリアでは、奈良県宇陀市、奈良県曽爾村、奈良県御杖村が街道上に位置します。途中にはいくつもの峠があり、急坂で馬の鞍が取れてしまったという伝説から名づけられた街道屈指の難所、鞍取峠も。古い町並みの残る街道沿いには、旧宿場町の道標や常夜燈も立ち、かつての趣きを今に伝えています。
あぶらやは、古くから交通の要所として栄えてきた萩原宿の中心にあり、伊勢本街道と初瀬街道の分岐点・札の辻にあり、明治10年頃まで営業していました。本居宣長も宿泊したといわれています。現在は歴史文化館として一般公開されています。
あぶらやの向かいには街道分岐点を示す角石の道標が建っています。
御井神社(みいじんじゃ)の主神、御井神(みいのかみ)は食物をつかさどります。本殿の裏山には奈良県指定天然記念物の植物、ツルマンリュウが自生しています。ツルマンリョウとは、直射光線にあたると枯死してしまうというヤブコウジ科に属する暖地性植物で、奈良県指定の天然記念物となっています。
奈良県宇陀市榛原檜牧964
奈良県宇陀市榛原高井679
15世紀中頃に街道の各所に設けられた関所のうちのひとつ、諸木野関所跡があります。植林地帯を抜けると、かつて9軒ほどの旅籠があったといわれる諸木野宿に出ます。
また、街道を少しそれると、戦国時代に活躍した北畠家家臣で弓の名将と伝えられる諸木野弥三郎の墓があります。
奈良県宇陀市榛原諸木野
奈良県宇陀市室生下田口
伊勢本街道の難所のうちのひとつで、標高は594m。名前の由来は、倭姫命が伊勢に向かう途中、この峠が険しすぎて馬の鞍(くら)が飛んでしまったとこから、また、旅人が馬の鞍を取ってひと休みしたことから、など諸説あります。
奈良県宇陀郡曽爾村山粕—奈良県宇陀郡御杖村桃俣
丸山公園は御杖村の桜の名所で、4月中旬~下旬には100本あまりのヤマザクラが見頃を迎えます。夏は蛍、秋は紅葉を楽しむことができます。 丸山公園の駐車場からすぐのところにある小道の階段を降りると、姫石明神(ひめしみょうじん)があります。この地も倭姫命ゆかりの地で、伊勢に向かう途中、女性の臀部のような形状の岩に婦人病の快方を祈ったとされています。 この先の岩坂峠を超えると三重県に入ります。