【東奈良名張やまなみライド】里山に恋して忍ニンルート

忍者の里を探訪

私の息子(12歳)は、川面に浮くタイヤの上に立ち、張られたロープをたぐりながら川を渡っています。他の人はほとんど浅い川に落ちてしまいました。でも私は落ちなかったです! タイヤの上に座って渡ったから。赤目四十八滝 での「忍者修行体験」のフィナーレを飾ったのはこの「水ぐもの術」体験でした。赤目四十八滝とは、三重県名張市にあり、日本の上級忍者がかつて修行した場所です。忍者の里だなんて、人混みや渋滞が苦手で、冒険や日本の田舎巡りが好きな私にぴったり。

「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら

Akame 48 Waterfalls
赤目四十八滝
行 程 名張駅 = 青蓮寺湖(レンタサイクル)= 柏原城址 = 赤目四十八滝 = 竜口= 青蓮寺湖 = 名張駅  ルートマップ
走行距離 20.4 km
獲得標高 307 m
実施日 11月14日

2ヵ月後、すっかり涼しくなった11月のある晴れた日。私は、名張駅に朝9時に到着しました。東奈良名張ツーリズムによる20キロのサイクリングツアーに参加するため、再びこの地を訪れたのです。近鉄特急 は、大阪、京都、奈良、名古屋から名張まで2時間弱、場合によれば1時間ちょっとで行ける電車で、運賃もお手頃です。

今回の旅の荷物は、宿泊用のバッグと日中のサイクリング用のリュックのふたつ。私は名張駅からすぐのスマイルホテル名張に泊まりましたが、温泉宿に泊まる場合は、名張駅から送迎サービスを行っているところが多いようです。名張駅にはコインロッカーがありますし、午後4時までなら、駅西側の「なばり観光案内所」に荷物を預けることもできます。

Nabari Tourist Information

私は忍者サイクリストなので(笑)、天候に適した服を着て、予備のモバイルバッテリー2つ、水筒を持参。自転車、ヘルメット、ガイドさんは東奈良名張ツーリズムが手配してくれました。忍者のような感覚を持ち合わせ、オンライン地図を使いこなし、日本語も流暢、予備のモバイルバッテリーの準備も万端—なら、ガイドなしでも大丈夫かもしれません。

名張駅からスタートすることも可能ですが、今回は東奈良名張ツーリズムの方の運転で3.5kmほど離れた「サイクルプロショップrpm 」(午前10時から午後7時まで、火曜日定休)に向かいました。到着したところ…「サイクルプロショップrpm」はまだ閉まっていました…。でもご安心ください! この日の私専用の自転車、GIANTのツーリング自転車が魔法のように現れたのです。ツーリングの後お店に入ったのですが、店内から見える景色は、世界中のどの自転車屋さんよりも素晴らしかったです。

Cycle Pro Shop RPM
「サイクルプロショップrpm」からの眺め

美しい景色と一体になる

11月下旬、紅葉した葉っぱからきらきらとこぼれる日の光のなか、山々はもみじで真っ赤に染まります。景色に目がくらんで自転車から転げ落ちないように! 11月のほか、10月、4月、5月もサイクリングに最適な季節です。

Red maple leaves

ところで、英語ではモミジもカエデもmaple(メイプル)と言いますが、モミジの葉とカナダ国旗に使われているカエデの葉の違い、知ってますか? モミジの葉は小さくて繊細ですが、カエデの葉は大人の両手を広げたくらいの大きさがあります。

涼しくなると、柚子や柿の木に実がなっているのを目にします。柚子は大きめの柑橘類の一種で、柚子の皮は香り付けとして使ったり、また蜂蜜と一緒にお湯で割って飲んだりします。旅の途中で柚子を手に入れたら、お風呂に浮かべてアフターサイクリングの疲れをいやしてみては。オイルは香りがよく、よいスキンコンディショナーにもなります。そしてもうひとつサイクリング中に見つけた花、サザンカ。ティッシュペーパーを重ねたようなピンクの花が濃い緑の茂みにたくさん咲いていました。

サザンカ
サザンカ

 


忍者の砦、柏原城址

今回のサイクリングコースは「サイクルプロショップrpm」からスタート。まず、長い下り坂を走り、風情あふれる古民家やブドウ畑を通り抜けます。

Nabari

最初の目的地は、勝手神社のとなりにある柏原城址(かしはらじょうし)と呼ばれる忍者の要塞。

Kashihara-joshi
柏原城址

柏原城は、伊賀忍者たちが、最も残忍と言われた織田信長から伊賀国を守るための最後の拠点だったそうです。信長は1580年ごろには伊賀を除く畿内全域の統一を果たしていました。その生涯は、数多くの歴史小説、ドラマ、映画、ゲーム、漫画、アニメにもなっています。

1579年、上忍・百地三太夫(ももちさんだゆう)率いる伊賀忍者軍は織田軍に初戦で勝利します(第一次伊賀天正の乱)。ところが1581年、再び攻撃を受けた伊賀忍者軍は必死に抵抗しましたが、劣勢を強いられ敗退してしまいます(第二次伊賀天正の乱)。勝手神社も、この柏原城も、そして村々も破壊されてしまったそうです。ちなみに、この最後の戦いの拠点、柏原に一番近い織田軍側の砦は、ここから北に5kmほど離れた山の上にあったそうです。

Honmaru at Kashihara-joshi
柏原城本丸があった場所

勝手神社から東に100メートルくらいのところにある林の中へと案内してもらい、草で生い茂った道を登りたどり着いたのは、手で掘って作られた土塁。500年前に生活していた人のことを想像してみました…ここに霊的な何かを感じる人もいるというのもわかります。

Katte Shrine
勝手神社(柏原)
The moat
土塁

自転車に戻ると、ガイドさんが神社を出ていこうとしているある男性となにやらおしゃべりを始めました。同級生にばったり会ってしまったとのこと! その方から缶コーヒーをいただいちゃいました。

赤目滝の魅力

次に、上級忍者が修行した場所であり、私の家族が忍者修行体験をした場所でもある赤目四十八滝へ、カーブの多い風光明媚な細い山道を進みます。赤目四十八滝は関西の人気観光地で、週末になると、車で訪れる観光客が駐車場を確保しようと1キロくらい渋滞になるそうです。そんな道中を今回は自転車でスイスイっと行きますよ!

To Akame 48 Falls

赤目四十八滝は、美しい滝以外にも、土産物店、カフェ、温泉宿、ビジターセンター、川沿いの遊歩道、オオサンショウウオセンターなどがあります。自転車はショップの前を通り、「赤目ビジターセンター」の自転車ラックに停めるか、または、駐車係が声をかけてきます。オオサンショウウオセンターの前では、水筒に水を補給することができます。

ほとんどの人がサンショウウオを実際に見たことがないのでは? サンショウオは、驚くと山椒のような匂いを発するのでそのような名前がついたとか。山椒好きですか?

Salamander

サンショウウオは、今まで見た生物の中で一番ユニークです。清流の岩陰に隠れてカモフラージュする能力は忍者と共通です。賢そうで、動きがゆっくりしていて、何か老樹のような神秘性を感じます。体長は1メートル以上になり、50年以上生きることもあるそうです。

Japan Salamander Center
日本サンショウウオセンター

サンショウウオセンターでは、数十匹のサンショウウオを水槽で飼育しています。水族館の見学は500円で、ハイキングコースへの入山料も含まれます。100円追加すると、日没後に竹あかりのライトアップも見ることができます(10月下旬〜1月下旬)。それ見たいじゃないの! チケットは自動販売機で購入します。英語にも対応していましたよ。2階には海外からの旅行者向けの世界地図があったので、カナダのところにピンを刺してきました!カナダは私が一番のりだったみたい。

オオサンショウウオセンターを過ぎると、滝のある渓流沿いを3.9キロメートルにわたって、絶景のハイキングコースが続きます。わかりやすい地図もあり、子供から大人まで楽しめます。この日はサイクリングがメインだったので、最初の大きな滝までしか行きませんでした。竹あかりの手の込んだデザインがクール。日没後にライトアップされたら、どんなに幻想的なんでしょうね!

「赤目ビジターセンター」に戻りました。「堅焼き」と呼ばれる固くてなかなかかじれない忍者クッキーを横目に、私は「へこきまんじゅう」を買ってピクニックテーブルで食べることにしました。

Tamakiya sells the fart buns
へこきまんじゅうを販売する「たまきや」

ココナッツ味かシナモン味がよかったのですが、売り切れだったので、アップルとパイナップルと、あとなんだったかな…を買ってみることにしました。サイクリングのエネルギー補給として最高!息子は“おならパワー”だと言いそうですが、このおまんじゅうが果たして本当にガスの原因になるかどうかは私にはわかりません。値段も手ごろで、甘くて腹持ちが良いので、持ち帰りのグルメコーヒーに合いそうです。
へこきまんじゅう

Fart bun
へこきまんじゅう

ビジターセンターのトイレに立ち寄ったところ、偶然にも竹あかりのキャンドルホルダーのポップアップショップに遭遇しました。カナダ人の私は、小さなカエデの葉の形の穴が開いているものが気に入り、バッグに入れて持ち運べるサイズだったので購入してしまいました。

今度このルートでサイクリングするときは、近くにある「赤目四十八滝キャンプ場 」のかわいいバンガローに泊まってみたいな。赤目四十八滝の売店は10時まで閉まっているので、上り坂の上にあるキャンプ場で朝寝して、遅めのグルメコーヒーとへこきまんじゅうを買ってからサイクリングの冒険スタート、なんていいと思いません? 赤目四十八滝キャンプ場は赤目口駅からバスで行くことができ、GIANTのレンタルクロスバイクが2台あります。夜は食材も含めてBBQのセッティングもしてくれるそうです。

サイクリング天国

Ryuguchi

燃料補給もしたし、赤目四十八滝キャンプ場の近くまで戻り川を渡ると、1kmの上り坂が待っていました。実は私、歩いてしまいました。へこきまんじゅうを3つ食べておいてよかった…。私は赤や黄色の燃えるような紅葉に気持ちを集中させるようにして上り坂を歩きました。

坂を登りきると、赤目口駅までは下り坂か平坦な道が続きますが、あまりスピードを出さないように。下り坂の途中の竜口という地域には、前述した最高位の忍者・百地三太夫の子孫の私邸があります。そのあたりの渓谷は夏場は涼しいだろうし、冬になれば一日の大半は日影になるのだろうな。

数百メートル先、畳屋の壁に貼られたポスターが目に飛び込んできました。ジャケットを着た犬が描かれています。この辺りでは、イノシシから田畑を守るために訓練された犬もいるみたいです。私は犬もイノシシも見なかったけれど、ガイドさんが鹿を何頭か見たらしい…。おっとスピード出し過ぎてしまいました。まさにサイクリング天国とはこのこと。車1台分の幅しかない舗装された道。車もいない、標識もない、ゴミもない、電線もない、木々と川だけ。暑い日だったら、きっと私、川に足をつけて休憩していたと思います!

Cycling heaven

忍者の里への田舎道を進み切ると、もう少し広い川沿いにあるステーキレストランに突き当たります。そしてまた右に曲がって広くて交通量の多い道に入り、500mほど進んでさらに右折します。川を渡り、農家の家々や畑の間を縫うように進み、赤目口駅を過ぎ、さらに農家や畑の横を通って、出発したときに通った大きな坂を上りました。

Steak House Sandayu
伊賀牛ステーキレストラン「炭火焼き 三太夫

Farm

Farm

青蓮寺(しょうれんじ)湖観光村 」に戻るには、残り少ないへこきまんじゅうパワーを全て使い果たす必要がありました。ゴール手前に美しい竹で飾られた蕎麦屋やとても素敵なケーキ屋があるのを発見。どっちも捨てがたい、両方入ってみるのもいいかも! 私もぜひ次回は入ってみたい…。

Shorenji Lake Tourism Village

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