【東奈良名張やまなみライド】清流の村グリーンルート

清流の里、東吉野村へ

12月4日(土)午前9時。気温はあと2~3度で氷点下。近鉄特急 (伊勢志摩、奈良、京都、大阪、名古屋を結ぶ特急)に乗って三重県の名張駅に到着。東奈良名張ツーリズムの皆さんが出迎えてくれました。そして車で40分、「奈良カエデの郷ひらら」に向かいます。「奈良カエデの郷ひらら」からツーリングタイプのレンタサイクルに乗って、今回の冒険の旅が始まります。電動アシスト自転車もありますよ。

「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら

Niukawakami Shrine

行 程 名張駅 = 奈良カエデの郷ひらら (レンタサイクル) = 天誅組終焉の地 / ルチャリブロ = 西善 = 丹生川上神社 = ひよしのさとマルシェ = 奈良カエデの郷ひらら = 名張駅   ルートマップ
走行距離 30.4 km
獲得標高 389 m
実施日 12月4日

World Maple Park Hirara

ホームシックぎみのカナダ人として、この「奈良カエデの郷ひらら」については興味津々。行ってみると、なんとそこには、木造の建物が。日本に住んで20年、今まで見た中で一番美しい公立学校です。その校舎は、私の父が生まれた年、1935年に建てられたものだそうです。

施設は10時にオープンします。現在9時50分。トイレに行き、ライディングギアを身につけるとしよう…防風グローブ、ヘッド&フェイスカバー、ウールのカーディガン、ダウンジャケットも。レインパンツをバッグに入れたので、小雨の時は安心だけど、ちょっと暑いし、坂道を上るときはこぐのに邪魔かも。蒸し暑くなる登り坂ではジャケットのジッパーを下げて、風当たりが強い下り坂ではジッパーを上げることにしよう。

Heading to Higashiyoshino

午前10時。緩やかな坂道を惰走。鳥のさえずり、自分の息づかい、タイヤが路面を走る音が聞こえます。最初に止まった場所から最後に止まった場所までの間に通った車はたった6台くらい。走りながらいろんなものを目にしました。古民家、神社、赤い橋、滝、地蔵、小屋に置いてあるブルーシートにくるまれた丸太のような、ちょっと変わったものも。それ以外は、まわりはほとんど森や畑、そしてコケ、コケ、コケ。

“Café アリス” と書かれた素朴な看板は、庭師のいる山小屋のようで、思わず入ってみたくなります。さらに「アグリファーム 」(ブルーベリー)、「きのこの館 」を通り過ぎ、道路はトンネルに続きます。ガイドさんは右へと曲がっていき、狭い道をさらに狭い谷のほうへと下っていきます。杉の木々の間からちらっと見下ろすと、そこには川が。たぶんその杉は私が子供の頃くらい昔に植えられたんじゃないかな。川沿いを走っていると、いくつかステキな木造の建物を通り過ぎました。ライドメイトの藤尾さんにきいたら「旅館とか民宿ですね」と、教えてくれました。

山あいの小さな図書館

8キロほど走ったところの橋に自転車を停め、タイミングよく一休み! 岩がごろごろと転がる渓流を渡り、約150年前に日本を外国から守ろうとしていた歴史上の人物のお墓へ。

Tenchu-gumi
江戸時代の尊王攘夷派のひとつ天誅組(てんちゅうぐみ)が壊滅した場所
the grave of a historical figure, Torataro Yoshimura
天誅組の吉村寅太郎の墓

左手の小道の先に小さな建物を見つけました。どうやらそこは地域の住民のための私設図書館のようです。このサイクリングコースのほかの施設と同じく、開館時間は不定期のようで、その図書館は閉まっていました。中を見てみたくてたまらない!

Lucha Libro

Lucha Libro
人文系私設図書館 Lucha Libro

もう一人のライドメイト、井上さんはこの村で育ち今も住んでいるそうです。小学校はバスで通い、中学は自転車通学だったそう。ブリティッシュ・コロンビアの山奥で育った私の子供時代と比較しつつ、ここで育つってどんな感じなんだろう、とふと思いにふけってしまいました。

和菓子でエネルギー補給

さらに2、3kmほど行くと、風雨にさらされながらも長年持ち堪えている木造の商店が500mほど並んでいます。西善菓子舗の入り口には、書道のように筆で文字が書かれた紙が貼ってあり、ガラガラと音を立てる和風の引き戸の上には粋な暖簾がかかっていました。

Nishizen
西善

この和菓子屋さんは、先ほどの歴史人物のお墓と同じくらいの歴史があるのだそうです。ご主人が日本茶とあんこの入った和菓子を出してくれました。私は、日本語の先生へのお土産に、小さくて柔らかい、舌の上でとろける玉の形の砂糖菓子を選びました。日本人は、箱に詰められたお菓子を買って会社の同僚や親戚に贈る習慣があるんですよね。それにしてもこの繊細で美しい包装で、1箱500円もしないなんて。

Sakigake Wagashi at Nishizen

あんこでエネルギー補給をしたあとは、スピードアップしてペダルを漕ぎ進めます。この村で一番にぎやかそうな場所に建つ、急勾配の屋根の古民家を通り過ぎました。

Higashiyoshino

後で調べたら、その店は「麦笑(むぎわら)」という、300年前の古民家を改装したパン屋さんでした。店主は酵母を自家培養し、国産小麦から石臼挽きした粉を使うなど、できるだけ地元産のオーガニック食材を使用することを心がけているそうです。

Mugiwara Bakery

このサイクリングの写真を撮ってくれているアキコさんも、「このパン屋さんに行ってみたいとずっと思っていたんです」と話してくれました。このパン屋さん、お昼には売り切れてしまい、しかも週末しか営業していないそうです。いつかまた来ようと、後ろ髪を引かれるのでした。

クリスタルのような清流

次のスポットは「丹生川上神社(中社)」。 675年に創建され、水の神様をお祀りしています。1922年、この神社は平安時代日本で最も格式の高い神社の一つであるということが、地元の学者によって確認されました。

Niukawakami Shrine

お守りを授けていらっしゃる宮司さんに、お賽銭箱のそばにあった黒馬と白馬の絵について聞いてみました。昔の日本では、最高位の統治者や役人は馬を所有していたそうです。馬は最も価値のある財産の一つだったんですね。雨を降らせるには黒馬を、雨の終わりを祈るには白馬を捧げたんですよ、と宮司さん。

Priestこの山あいの村で馬が食べられるものがあるんだろうか、馬と共に育った私は理解に苦しみます。宮司さんは、ここからも近い曽爾高原に生えている背の高い草(ススキ)などもこの辺りに生えていたようで、馬はそれを食べていたのだろうと説明してくれました。今でもこの神社の大きなお祭りでは馬を見かけるそうです。そこでふと、旗竿が白と黒の縞模様なのはなぜ? とまた質問してみました(2つ上の写真参照)。なぜだかわかりますか?

Mossy tree

神社の前にある苔に覆われたヒノキの大木は、日本の最初の天皇である神武天皇がここで祈願したときは、ほんの苗木であった可能性が高いです。この木にはパワーがみなぎっています。この木は多くのことを見、多くの祈りを聞いてきたのでしょう。そしてその巨大な根から苗木が育つ。この木に特別なものを感じるのは、私だけでしょうか。

Sacred cedar tree

あるいは、あなたにとって特別と感じるものは水かもしれません。このコースでは高見川の清流沿いを走ります。神社とヒノキの大木の間には井戸があり、紙コップのディスペンサーが2つ設置されています。神聖な井戸から湧き出る神聖な水を試飲することができるんです。なんとリフレッシング!この神社のホームページ (このような古い神社もウェブサイトを持っているなんて!)には、特別な石灯籠、茶室、なでると徳がさずかるフクロウ像(丹生のなでフクロウ)、願い事を託して滝に投げ入れることでご利益が得られる龍玉などが紹介されていました。

Sacred well

次に、滝のほうに行ってみました。その滝「東の滝(ひんがしのたき)」と呼ばれ、初代天皇である神武天皇が祈願したといわれる「夢淵(ゆめぶち)」に流れ込んでいます。赤い橋を渡ると滝のふもとまで行くことができます。

Red bridge

Pool of dreams
夢淵

そして、滝のすぐ上にある別の橋を渡ります。

Hingashi no Taki

Hingashi no Taki
東の滝

近くの岩場では、年配の男性たちがバーベキューパーティーをしているようで、おいしそうな香りが漂ってきます。私もお腹が空いてきました…。

さて、自転車に戻りましょう。道はジグザグ、上って、上って、さらに上ります。少しずつ一番軽いギアで進んでいるので、漕ぐのに忙しい。すると藤野さんが何かを指さしました。あの下の方に見える、集落を指しているの? それともランチを食べる場所? いや、藤尾さんは「関西のマッターホルン」と呼ばれる高見山(たかみさん)を指差しているみたい。なんで自転車を止めてちゃんと見なかったんだろう、信じられない! 次来たときはちゃんと見る!

Back on the route

小さな道の駅でのランチタイム

午後1時頃。このルートで標高の一番高いポイントに到達した後、惰走で下へ下へと「ひよしのさとマルシェ」まで下ります。

Hiyoshi no Sato Marche

「ひよしのさとマルシェ」は小さな道の駅で、公衆トイレ、自転車ラック、地元の特産品、野菜、お菓子が売られ、麺類などが食べられるイートイン・コーナーも併設されています。この地域はそうめんの産地として有名だそうです。お店にはパステルカラーの乾麺や、柑橘系の調味料が売られています。

Hiyoshi no Sato Marche
左:さまざまなそうめん類/右:柚子関連商品

イートイン・コーナーで私が注文したのは、麺の上にゆで卵半分、大きなエビの天ぷら、油揚げ2枚がのったもの。ここのランチは大当たり!右の端っこに柚子胡椒がちょこんとあるの、見えますか? 周りの日本人に勧められて入れてみました。おいしかった!

Taamen
私たちはそうめんではなく、たあめんという麺を食べました。

カエデの郷ひらら

もう一度ヒルクライムして、短いトンネルを抜け、折り返して最初に走った道に戻ります。どんな旅でもそうだけれど、行きより帰りの方が早く感じます。夕日が沈むころ、「カエデの郷ひらら」に戻ってきました。もうすぐ午後5時。

World Maple Park Hirara

併設のカフェが閉店する直前にパンケーキを注文しました。メープルシロップがたっぷりかかった、カップケーキを平たくしたような、小さくて厚みのあるかわいいパンケーキ。メープルシロップは一滴も残すわけにはいかない! 残ったシロップをティーカップに注ぎ、一息に飲み干しました。ああおいしい。

Hirara pancake「カエデの郷ひらら」の古い校舎の中を歩き回ってみる時間くらいはまだありそう。どんな世代の人でもなつかしい気持ちになると思います。ガラス越しに木製の机や椅子を眺めながら木造の廊下を歩き、プラスチックや電子機器、大量生産のなかった素朴な時代を想像してみる。黒々とした厚い木の階段の手すりに手を滑らせてみる。きっと大木から手彫りで作られたものに違いないと思います。

Classroom at Hirara外に出て、元々校庭だった場所にもう一度行ってみて思いました。この場所、構想、そして「奈良カエデの郷ひらら」を作るため協力しあったコミュニティに畏敬の念を抱かずにはいられない、と。ここにあるカエデの木は、2005年に大阪在住のカエデ収集家の方から寄贈されたものだそうです。この時期、葉はずいぶん前に落ちてしまったみたいだけれど、ここのカエデの木は私より若く細く、まるでかつてここで遊んでいた子どもたちに代わるように仲良く寄り添って植えられていて、可能性に満ちあふれているように感じます。
50年後、100年後、このカエデの庭はどんな風になっているのでしょうね。このような方法でかつての広大な学校に新しい息吹を吹き込むなんて、本当に素晴らしくて心動かされました。

World Maple Park Hirara
写真提供:奈良カエデの郷ひらら

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