神社、歴史あるまちなみ、そして桜並木
奈良県宇陀市(うだし)を走る「まほろば桜ルート」は、江戸時代の街並みが残る田舎道を通り抜け、珍しい神社、2社を巡ります。息をのむような田園風景の中に点在するカフェや公園、樹齢300年で幹回りが3m以上もある桜の木を見たあと、舗装された川沿いの桜並木道を走りながらスタート地点へと折り返します。最高のサイクリングコースをどうぞ!
・「東奈良名張やまなみライド」とは、関西東部の深い山と渓谷、山里を駆け抜ける一連のサイクリングコースです。詳しくはこちら
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行 程 | 榛原駅(レンタサイクル) = 墨坂神社 = 八咫烏神社 = 道の駅「宇陀路大宇陀」 = 宇陀松山 = 道の駅「宇陀路大宇陀」 = 又兵衛桜 = 宇陀川沿い = 榛原駅 Route map |
走行距離 | 18.1 km |
獲得標高 | 125 m |
実施日 | 12月5日 |
このルートは約20kmにわたり、ほとんどが平坦な道で交通量も少なく、サイクリングをしている時間よりも観光やカフェを楽しむ時間のほうがずっと長いくらいです。発着地点は榛原(はいばら)駅。大阪、奈良市内、京都、名古屋から最も効率的にアクセスするには、近鉄特急 をおすすめします。朝9時前に到着するようにすれば、1日を有効的に使えますよ。私もそうしました! 榛原駅南口を出てすぐ左に曲がると、公衆トイレの横に観光案内所があり、そこで電動アシスト付き自転車をレンタルできます。車輪は小さく、ギア、高さ調整のできるシート、自転車カゴがついています。ヘルメットも含まれていますよ。 [1]
「まほろば桜コース」の「まほろば」とは、日本の古語で、奈良県にあるとされている楽園や理想郷をあらわしています。「桜」の由来は、このルートの後半に登場するたくさんの桜の木を見たら納得してもらえると思います。
朱塗りの神社、墨坂神社
12月の肌寒い日曜日に、東奈良名張ツーリズムのクルーと一緒にサイクリングコースをまわることになりました。桜は咲いていないものの、やわらかな日差しに恵まれた日でした。最初の目的地は駅から5分以内の場所。自転車を手で押しながら宇陀川に架かる朱色の歩道橋をわたり、朱色と白の墨坂神社 のふもとへ。墨坂神社は第10代天皇、祟神(すじん)天皇が創建し、健康の神様を祀っている神社です。
この神社で崇神天皇が自らも患った疫病の終息を祈願し、その願いが叶ったと言い伝えられています。新型コロナの終息を祈るのには、これほど打ってつけの場所はないでしょう! また、境内に湧く御神水、巨大な杉の木の鎮座するパワースポット…ぜひこの杉の木に触れて、心を癒してみてください。杉の巨木に触れると、確かに心が癒されていくような感覚になります。この神社では、古くから行われている神事や祭りを見ることができるのですが、この日砂利敷きの境内まで自転車で行ったときには、神社は深い眠りについていたかのようにとても静かでした。
かつては、この神社の朱色を作るために、辰砂(しんしゃ)の結晶を採掘して粉にしていたのだろうか…とふとこのような疑問がわきました。辰砂とは、日本のように現在も火山活動や温泉のある地域によく見られる鉱物です。ウィキペディアによると、古代の人々はこの朱色を作る過程で、水銀中毒になったそうです。一方でよい面もあり、この色に含まれる水銀のおかげで木材が長期保存されてきました。
朱色といえば、大和は漆器でも知られています。神社にも漆を塗ろうとしたのかな、と気になります。ウィキペディア(英語)によると、古来、朱は血の色、つまり命の色とされてきたそうです。寺院や天皇の馬車の塗料、朱肉に用いられていました。また天皇専用の朱墨にも使われていました。中国の道教では、朱を永遠のシンボルと関連付けていたそうです。
また、神社が朱色であるのは、朱色が邪気を祓うと信じられているから、というのは日本人の間ではよく知られています。
三本足のカラスをお祀りする神社
25分間の軽いサイクリング(3.7km)の後、八咫烏神社 に到着しました。「八咫烏(やたがらす)」の「八咫(やた)」は“大きい”という意味だそうです。御祭神は日本サッカー協会とサッカーの日本代表チームのシンボルでもある神聖な三本足のカラスです。
サッカーボールを頭の上に乗せてバランスを取っている八咫烏が境内にいるんですが、見つけられるかな? 実は、中国神話にも三本足のカラスが登場しています。私が思うに、中国の影響を受けて日本のカラスが中国のカラスと合体して「八咫烏」となり、サッカーの大きい試合の前に祈願するようになったのかもしれません。
古来、カラスは腐肉や戦いの後の人間の死体に群がることから、復活や生まれ変わりのシンボルとされていました。日本神話では、神の遣いである神聖なカラスが、神武天皇が和歌山の熊野本宮大社 から大和まで向かう約120kmの道のりを、飛びながら道案内したと伝えられています。
16世紀までさかのぼる、薬の町
再び出発。途中、剥製屋さんが目に留まります。そこから5kmほど進み、宇陀松山地区 にたどり着きました。これはとても貴重かも! 16世紀までさかのぼる薬の町だそうです。 江戸時代の木造建築がそのまま残る町家通りで、現在も人々が暮らしています。
見るべきところがたくさんあるので、ここでは歩くことをおすすめします。お店の窓をのぞきこんだり、勇気を出して中に入ってみたり。私が訪れたのは、「尚文堂書店 」。まるで過去30年分を所蔵する博物館のような場所でした。また、同じ通りにある「森野旧薬園 」も探索してみてください。宇陀市歴史文化館「薬の館」は、藤沢薬品創業者の旧邸兼薬問屋です。ここで聞いた話では、江戸時代の裕福な家の女中さんは、店の上の、通りに面した格子窓のある狭い部屋に住まわされていたそうです。そんなの私はお断り! 今ある自由と健康に感謝しながら、自転車をすすめました。
新鮮な空気とエクササイズの組み合わせは、必ずと言っていいほど食欲をかき立てます。その先にあった和菓子屋さん、「松月堂 」に立ち寄り、四角くてふわふわで軽く、卵の風味が広がる甘い「きみごろも」(140円)を食べてみました。メインコースの前のデザート! ん〜おいしい。
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この辺りには、魅力的な外観のカフェが結構あるんですよ。その中で、ゆっくりランチができるお店を見つけました。このエリアでは60分無料のWi-Fiサービスがあります。
おなかも満たされ、道の駅「宇陀路大宇陀」に向かって道をわたりました。角を曲がると、カラフルな英語のメニューボードが目に飛び込んできました。パン、スパイスカレー、ホットドッグ、ホットサンド、サンドウィッチ、チーズなど。店内のメニューには、ピクルス、アンチョビ、フライドポテト、フライドチキンなども載っていて、正直、お腹いっぱいだけど、このお店はすごく魅力的に感じました。
さらに調べてみると、ここが「奥大和ビール 」というマイクロブルワリーであることを知りました。「TAP ROOM(地ビールの醸造所が併設されたバー)」、「TAP STUDIO(ビールを学ぶ場)」、「TAP to BED(泊まれるゲストハウス)」も併設されています[3] 。ここでは、少なくとも10種類はある、賞を受賞するほど個性的なクラフトビールや、地元のハーブを使ったビールのほか、ハーブティー、コンブチャ、ハンドドリップコーヒー、ジュース、キッズビールなども提供しています。私はすっかり魅了されてしまい、4月の桜の季節にぜひまた訪れようと計画しています。
自転車に飛び乗り、牧歌的な風景を楽しみながら、森の中に続く小道をさっそうと走っていると、木製の看板を通り過ぎました。ブレーキをかけて読んでみると…「パワースポット」と書いてありました。これはまた次回のお楽しみかな。
桜の季節に戻ってくると誓って
冬ですっかり葉っぱが落ちてしまった樹齢300年以上の又兵衛桜 をちらっと見てきました。
そして、このルートの締めくくりは、桜並木を一望できる川沿いのオフロードコースです。まさに最高のサイクリングコース。エンジョイ!
[1] 観光案内所は9時から17時まで営業しており、1日1,000円で自転車をレンタルすることができます。
[2] 入場料:310円(小人150円)/開館時間:10時〜16時/休館日:月曜・火曜(月曜・火曜が祝日の場合はその翌日)、12月15日〜1月15日。
[3] 営業時間は公式InstagramまたはFacebookをご確認ください。
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